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経営者は四面楚歌に陥らないように気を付けろ

項王の軍は垓下に防壁を作ったが、兵は少なく食はほとんど尽き果てていた。漢軍と諸侯の兵は、これを幾重にも囲んだ。夜、漢軍が四面から楚歌を歌うのを聞くと、項王は大いに驚き、「漢はもはや楚の地を皆取ったのか。なんと楚人の多いことか」と言った。そこで項王は夜中起き上がって、帳中で酒を飲んだ。美人があり、名を虞といい、いつも幸愛せられて項王に従っていた。また駿馬があり、名を騅といい、いつも項王の愛乗するところであった。項王は悲歌忼慨して自ら歌を作った。

力は山を抜き 気は世を蓋う
時利あらず 騅逝かず
騅逝かざるを 奈何すべき
虞や虞や 汝を奈何せん

歌うこと数回、虞美人がこれに唱和した。

(解説)
漢軍は、韓信が30万の兵を率いて先鋒となり、孔藂と陳賀が側面を固め、総大将の劉邦の後ろに周勃と柴武が陣取った。対する楚軍は項羽が率いる兵は10万ばかりであった。そして項羽を囲んだ時に、楚の歌を歌ったのは、劉邦の心理作戦であったと言われている。この故事から、敵や反対する者に囲まれて孤立することを四面楚歌と言うようになった。

問題なのは、項羽が形勢不利と知り、別れの宴席を行ったときに、心配したのは楚兵の事ではなくて、愛人と馬だったということだ。会社が危機的な状況になったときにリーダーがこれでは、スタッフとしてはやり切れないし、リーダーにはついて行きたくなくなるだろう。21世紀初頭に証券取引法違反で逮捕された上場企業の社長が「自分が逮捕されたら彼女が可哀そう」と言ったらしいが、部下はさぞやがっかりだっただろう。本当のところはどうか知らないが、社長の指示でやりましたと言われちゃってもやむを得ない。この一言が出るということは、終始そのような態度であったということだ。まさに自業自得というものだろう。

リーダーが一番心配しなければならないのは、会社のスタッフの事だ。その後は会社をサポートしてくれた外部取引先。それで次ぐらいがリーダー本人の心配をするのは良いし、自分の心配に加えて、自分の家族の心配も良いと思うが、愛人だけはやめておこう。ましてや馬はもっとやめておこう。スタッフのモチベーションや自分に対する信用を大いに下げてしまうことになる。

[教訓]
〇会社が危機的な状況に至ったときに、まずはスタッフの事を一番最初に考えろ。
〇会社が危機的な状況に至ったときに、自分の愛人や趣味の心配なんてのはどうでもいい。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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