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自分がやって来たことしか部下に無茶ぶりするな

廬生が始皇に説いて言った。「私らが霊芝・奇薬・仙者を捜しましたが、いつも出会ったことがありません。何か障りがあるもののようです。」方術の中に、『人生時に微行をなし、もって悪鬼を去れ』とありまるが、人主は悪気が去れば真人になれるのでありまして、居所を臣下が知れば、神気に障りがあります。真人は水中に入ってもぬれず、火中に入っても焼けず、雲気をしのぎ、天地と共に長久のものです。いま主上は天下を治めておられますが、まだ恬淡にはなっておられません。どうぞ主上のおられる場所を、人に知られないようになさいますように、きっと不死の薬が得られるでしょう。」そこで始皇は、「わしは真人になりたい。だから自分で真人といい、朕とは言わないでおこう」と言い、咸陽の近傍二百里内の宮殿二百七十に復道と甬道を連絡させ、各宮殿に帷帳と鐘鼓と美人を充たし、それぞれの部署を異動させず、皇帝が行幸する場所を言うものがあれば死罪にすることにした。

(解説)
不老不死の薬を捜せと無茶ぶりされた臣下たち。廬生が切り返したのは、不老不死の薬を手に入れたければ、帝自体が「真人」にならなければなりませんと。真人とは水中に入っても濡れない、火中に入っても焼けない人。そのためには場所を人に知られないようにとのこと。そうはいっても真人を充たしているだけでも、ダメだとは思うが。始皇帝は晩年になって、かなりイカレた帝になり果ててしまった。いずれにしても、真人にならなければ不老不死の薬は見つからないわけだから、臣下はいい言い訳を見つけたと思ったに違いない。しかし敵もさるもの。始皇帝は真人になるのをあきらめたと見えて、臣下に無理難題をさらに吹っ掛けた。それで、臣下が作り出したのが水銀等を原料とした薬のようで、不老不死を求めて、その薬を服用し、死を早めたという皮肉になってしまった。伝説によれば、不老不死の薬を求められた臣下の徐福は始皇帝の怒りを恐れて日本に渡ってきたとも言われている。

さて、交渉術において、相手の要求を押し返すためには、無理難題には無理難題を跳ね返すのが良い。そして相手に常にボールがある状態を作ればよい。もちろん通常のビジネス関係であれば、お互いが歩み寄ることで、お互いにとって最良な関係を築いて取引をするのが望ましいのだが、ときには相手の機嫌を損ねずに、やらないとかやれないとは言えないが、今回はやりたくない、あるいは不可能と言った状況は起こり得るだろう。ある条件が完成しなければうちらもできません、といういい方は自分の能力を低く見られないためにも良いと思われる。もちろんできないことはできないというのが一番のマナーなのだが、それを言いづらいことはあるものだ。

もう一つは、自分の目標を言葉にすることでそれを実現させる確率が上がることがある。上記の例は、「自分を真人ということにしよう」である。なりたい自分をイメージして、なりたい自分を言葉だけで先に実現してしまうのだ。他人に言いふらすかどうかはともかく、自分の心の中に止めておくだけでも効果がある。

[教訓]
〇相手から無理難題が来たら、無理難題で押し返せ。
〇自分の目標をあえて、自分の口に出せ。実現可能性が高まる。
〇無茶ぶりは他人にするものではない、自分にしろ。もちろん無茶ぶりして成長する奴はするが。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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