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与えられた戦力で戦え

かつて青がある人に従って甘泉宮の居室(囚徒のいる所)に行ったとき、一人の囚人が青の人相を見て、「貴人の相がある。官は封侯に登るだろう」と言った。
青は笑って、「人に奴僕扱いされている身、一生涯鞭うたれず罵らないで済めばそれで結構だ。どうして封侯等になれよう」と言った。

衛青の部下の蘇建が私に語って言うよう、「かつて私は大将軍を責め、『尊貴の身分でありながら、天下の賢大夫は誰も大将軍をたたえません。願わくは将軍には、古の名将に鑑み、賢者を選んで登用せられますように』と言ったところ、大将軍はこれを辞謝して、『魏其侯・武安侯らが賓客を厚遇して以来、天子は常に歯を食いしばって無念がっておられる。かの士大夫を親しみ手なずけ、賢者を招き不肖を退けることは、人主の権柄に属することで、人臣としてはただ法を奉じ職に従うだけでよい。士を招こうなどとは思わぬ』と言われた」と。

(解説)
前段は、謙虚な衛青と言ったところだろうか。結局大将軍まで上り詰めたが、元々密通して生まれた子ゆえに、正妻の子からは疎まれて育ち苦労をした。それ故、何も高望みすることはなく、常に謙虚な存在だった。最初から正妻の子であれば、生まれてから偉そうな態度を取り、そのまま長になってしまうが、本当に臣下は心からついてこない。どこかで綻べば、信用を得られない。所詮、権力があったが故に許されたわがままにすぎない。権力がなくなればただの駄々っ子が多い。真なるリーダーになるためには、地に足を付けたポジションから這い上がった者の方がメンタル的にも強い。どんなことがあっても、一番下を見てきているからだ。リーダーになる人物は、最初は下を知った人間でなければならない。坊ちゃんで強力なリーダーになる人物は過去いなかった。そのような人物は危機的状況において、強いリーダーシップを発揮できずに終わる。

後段もまた謙虚な衛青であり、自分の立場を良く分かった態度である。要するに、部下を選んで採用した方が良いと言ったところ、人を選んで採用するのは、経営者の決めることで、自分は経営者が選んだ人材を使いこなすことが仕事である、というのだ。採用して、あいつは使えない、と嘆く経営者あるいは中間管理職のいかに多いことか。もちろん、採用してみて相性が悪いとか、うちの仕事には合わないとかはあるが、能力がないとすぐに見切るのはどうかと。それを使いこなしてこそのマネージャーというモノではないか。衛青こそは、マネージャーとしての鏡と言えよう。

[教訓]
〇入社したての部下を使えるとか使えないとか批評するな。
〇使いこなしてから、使えるか使えないかを判断せよ。そして、部下を上手く使いこなせない自分の能力のなさをまず何とかせよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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