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自分の大切にしているものを敢えて犠牲にせよ

単于に太子があり、名を冒頓と言った。その後、単于の龍愛する別の閼氏が末氏を生むと、単于は冒頓を排して、末子と太子に立てようと、冒頓を人質として月氏国に遣った。そして冒頓が月氏の人質になっているとき、頭曼は急に月氏を襲撃した。月氏は冒頓を殺そうとしたが、冒頓は良馬を盗み、これに乗って逃げかえった。頭曼はその勇壮に感じ、彼を一万騎の将とした。冒頓は鏑矢を作って部下に騎射の訓練を施し、「わしが鏑矢で射ったものを、その通り射たない者があれば、斬ってしまおう」と命令した。出かけて鳥獣を狩りし、鏑矢で射ったものを射たない者がいると、すぐに斬った。

やがて冒頓は鏑矢で自分の良馬を射った。左右に従う者の中に、はばかって射たない者があった。冒頓はたちどころにそれらの者を斬った。しばらく経って、今度は鏑矢で愛妻を射った。左右の者はすこぶる恐れて、射とうとしない者がいたが、冒頓はまたまたその者を斬った。その後しばらくして、冒頓が狩りに出かけ、鏑矢で良馬を射つと、左右の者はみなすぐにこれを射った。こうして冒頓は従者をすべて意のままに仕えることを知った。父の単于頭曼に従って狩りをしたとき、彼は鏑矢で頭曼を射った。左右の者もまた皆それに従って射ち、単于頭曼を殺した。ついに自分の継母と異母弟及び服従しない大臣を悉く殺し、自立して単于になった。

(解説)
マネジメントの本質がここにある。マネジメントは、調整型と専制型と二つあると言われているが、会社の成長期や不安定時期等は調整よりも専制型の方がスムーズにまとめやすい。調整型は皆の意見を聞いて、まあまあ、と調整していくタイプであるから、安定期に有効なリーダーともいえる。

冒頓単于については、まさに専制型のマネジメントである。軍隊式であり、何が何でも自分のいう事に従えと言う考え方である。そのために何をしたかというと、鏑矢で射ったものを射たない者がいると、その者を斬るという方法だ、最初は単なる鳥獣。その次は自分の良馬、さらに、愛妻、そして、再び良馬、最後に自分の生みの親、その時の単于頭曼だった。良馬とか、愛妻とか、生みの親という大切なものを射るのであるから、部下は躊躇するだろう。しかしそこで躊躇する者には死を与えた。まさに自分の大切なものを犠牲にするという覚悟を持つことで徹底的に命令に従わせようとした。

流石に真似はできないが、覚悟としては、経営者が大切にしているものを犠牲にすることはい必要だ。自分がかわいいと思っていたら、部下はついてこない。つまり自分に甘い人間はリーダーとしての資格がない。

[教訓]
〇自分の大切なものを犠牲にする気持ちがなければ、専制型のリーダーにはなれない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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