天下の大道は五つあり、これを実践する元が三つあると聞いております。即ち君臣・父子・夫婦・長幼・朋友の五者は天下の通道であり、智・仁・勇の三者は天下の通徳で、道を行うゆえんのものであります。だから、また、「勤めて行うのは仁に近く、問うことを好むものは智に近く、恥を知るは勇に近し」と言われるのです。智・仁・勇の三つを知れば、わが身を修めることができるのです。わが身も修められないのに、他人を治められるものは、てんかにまだいないのでありまして、これは百世不変の道理であります。
国大なりと言えども、戦を好めば必ず滅び、天下平なりと言えども、戦を忘るれば必ず危うし。
安危は令を出すにあり。存亡は用いるところにあり。
王は計りて成らざるも、その敝をもって安んずるに足る。
(解説)
天下の大道といわれるものに、君臣・父子・夫婦・長幼・朋友があると言い、これらは人間関係の上下関係等の望ましい関係を言う。最後の朋友とは単なる友達関係と言うあっさりしたものではなく、困ったときに助け合える関係を言う。これらの人間関係を組織において、守れれば、強固な組織となる。
次に天下の通徳とされる智・仁・勇とは、儒教のいう所の3つの徳である。智とは、道理を良く知っていること、仁とは他人に対する優しさ、親愛の情、勇とは恐れ亡き心である。これらを備えれば、自分を律することができる。自分をコントロールできない人間は、誰をもコントロールできない。つまり、私利私欲の塊では、形だけの経営者にはなれても、真のリーダーにはなり得ない。食べるためにしゃあないから、従ってやるか、給料もらえるから、と言う部下だらけになるのが私利私欲の塊である。みんながバラバラであるから、実は強固な組織にはなり得ない。リーダーそのものが私利私欲を無くし、他人のために尽くす気持ちを持てば、部下も他人のために尽くす気持ちを持とうと思う。その気持ちは組織を強固なものとする。
第二段目は、売上至上主義に陥ると、会社は亡びる。しかし守りを固め、売上を拡大しよう、新規事業を手掛けない組織は、これもまた亡びるということを意味している。
第三段目は、リーダーの命令が会社の生き死にを決める。しかし会社が存続するためには、スタッフを上手く使えるかどうかにあるということを意味している。
第四段目は、経営者は仮に経営を成功させなくても、経営を行って、失敗したという事だけでも立派だという事なのだ。
[教訓]
〇人間関係を重視せよ。上下関係を大切にすることが強固な組織を作り上げる。
〇売上至上主義に偏るな。しかし安定したときには逆に攻める気持ちが必要である。
〇リーダーの命令が会社の存続を決める。スタッフの使い方によって会社の存続が決まる。
〇経営者は失敗したとしてもそれはそれで立派である。