皋陶は士として人民を治めていたが、帝舜が朝廷に臨んだ折、禹と益と皋陶が帝の前で語った。「君たる者が、実際に徳を行えば、臣下のすることがはっきりわかり、助ける者の心も和らぎ睦むだろう」と謂うと、禹は「そうだがどうすればよいだろう」と問うた。皋陶が「慎んで身を修め、長久の計をはかり、九族の序を正しくして親しんだら、賢明な者は皆助けてくれる。政治は近きより遠くに及ぼすもので、そのもとは自分にある」というと、禹はその言葉を聞いて「なるほど」と言った。皋陶が「それには賢人を見出し、民を安んずることが肝要である」というと、禹は「ああ、その通りにすることは帝でもなんでもなかなかできぬところである。賢人を見つけ出すのを智という。見出せば官につける。民を安んずるのを恵といい、恵であれば万民が懐く。智であって恵なら、何も驩兜を憂える心配がなく、何で有苗を映す必要があろう。まして巧言令色の悪人を畏れるわけはどこにもない」といった。
(解説)
夏とは、中国最古の王朝である(紀元前1,900年頃~紀元前1,600年頃)と呼ばれている。まずは登場人物の概説を行っておく。
皋陶(こうよう):古代中国の伝説上の人物。公平な裁判を行った人物として知られる。
舜(しゅん):中国神話に登場する君主。
禹(う):中国古代の伝説的な帝で夏朝の創始者
益(えき):治水工事に成功した人物
驩兜や有苗:古代中国神話に登場する悪神。
巧言令色:巧みな言葉を用い、表情をとりつくろって人に気に入られようとする者のこと。
リーダーは徳を行うことで、スタッフが何をするかがよくわかり、心も和らいで親しみ合う。さらに、リーダーが謹んで向上心を持ち、長期的に考えて行動すれば、社内だけでなく社外の理解者もサポートしてくれる。経営は末端のスタッフにまで及ぼすもので、その中心にいるのがリーダーというものだ。徳とは、具体的には仁・義・礼・智・信の五徳や孝・悌・忠の実践として表される。
組織が大きくなってくると、末端のスタッフを管理する人材が必要であり、その人材は組織にふさわしく、リーダーの代弁者でもある者を必要とする。そうしてスタッフが安心して仕事に取り掛かれる状況になる。このような状況になれば、組織に怖いものがない。小さいままであれば、リーダーが直接、スタッフ相手に指示も出せるが一人で管理するのは後に困難となる。それを可能とするのが中間管理職の存在である。但し、ここでの中間管理職もまた、リーダーに負けず劣らずの徳を持っていることが必要である。
[教訓]
〇リーダーが徳を持てば、組織がまとまる。
〇中間管理職はリーダーの代弁者となる者を選べ。