淳于髠は王に隠語を持って説いた。「国のうちに大鳥がおり、王の庭に止まって三年の間、飛ばず鳴かずにいます。王はこの鳥が何鳥かご存じですか。」
王が言った。「この鳥は飛ばなければそれまでだが、ひとたび飛べば天まで飛び上がろう。鳴かなければそれまでだが、ひとたび鳴けば人を驚かそう。」
淳于髠はいった。「さっき、わたしが東の方から来ましたとき、路傍で豊作を祈っている者を見かけましたが、豚の蹄一つと酒一碗をささげ、『狭い山田からも籠に満てよ。低い窪地からも車に満てよ。五穀は豊かに実り、山のように家に満てよ。』と唱えているのです。私は彼の備える者がケチなのに、求めるモノが欲張りなのでおかしくなりました。
「酒極まれば乱れ、楽しみ極まれば悲し」と言い、・・・全て物事は極むべきではなく、極めれば衰える。
(解説)
淳于髠は斉の威王に仕えた。威王が出兵しないため、それとなく伝えたのが、第一段目である。「三年鳴かず飛ばず」。しかしそれに王は隠語で答えたのである。「飛べば天満で飛び上がり、鳴けば人を驚かす」それが自分であると。その後、威王は出兵し、韓、魏、趙は斉から奪った土地を返還したという。中々、動かない自分に対して、部下が諫めてきたら言えばよい。「飛んだら天まで飛び、鳴けばみんなを驚かす。タイミングを見ているのだ」と。
威王の八年に、趙が斉を攻撃してきて、趙の救援を頼むために、宝を送ろうとするが、淳于髠は足りないとはっきり言わずに、ここでも隠語を用いたのが第二段目。備えるものがケチだったら、それだけ多くのリターンを得られるわけはないということだ。従業員に対して給料を払わない、業者にケチる奴。こういう奴は大物にはなれない。それだけ仕事をしてもらいたければ、ケチってはならぬ。求めるモノを大きくしたければ、こちらでも多く備えなければならない。
第三段目も淳于髠から威王に対する言葉だが、頂点を極めようとすることが必ずしも良い事ばかりとは限らない、ということだ。背伸びは必要だが、過度な極めは考え物。大抵、細かいことを言ってくる奴は何でも完璧主義者だが、必要のないことは必要ない。無駄なことはやらない。と割り切るべし。本当に時間の無駄使い野郎が多くて困る。100%でなくていい。80%でいいのだ。満足してもらえばそれでいい。
[教訓]
〇待ちも重要。攻め時はタイミングである。
〇多くを求めたければ、その前にこちらも多くを先に出せ。
〇完璧主義は時間の無駄だ。不要なものは不要。割り切れ。満足してもらえればそれでいい。完璧にこだわったらきりがない。