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安定したときにこそ、リスクに注意せよ

『物、類を同じくして能を異にする者あり。ゆえに力は鳥獲を称し、捷は慶忌を言い、勇は賁育を期す』と。

また道を掃き清めたうえで行き、路の中央を馳せられても、時には馬が轡を外して暴れるような変事もあるもの。まして雑草の茂みを渡り、小高い所を馳せ、獣をむさぼる楽しみに目先がくらみ、変事に備える思慮のない場合には、なおさらのこと。それが災いとなることも不思議ではありません。陛下が万乗の天子たる重器を軽んじ、その位に安んぜず、万に一つでも危険な道に出るのを楽しみとせられるのは、わたくしの秘かに賛同できないところです。思うに先見の明あるものは、事を萌芽の前に予見し、知恵のある者は、危うきを未然のうちに避けるものであります。もとより禍は多く目立たぬところに潜み、それを揺るがせにすることが起こるものです。『家に千金を累ぬれば、坐するに堂に垂せず』とあります。つまらぬ小事のことのようではありますが、そのまま大事に例えることもできるのです。

興るときは必ず衰えることに思いを致し、安らかなるときは必ず危ういことに思いを致す。

(解説)
第一段目は、「物には同類でありながら能力を異にしているものがいる。そのため腕力では鳥獲、すばしこさでは慶忌、勇ましさでは孟賁・夏育になろうする」と言う意味である。性格が似ていても、営業をやらせた方がいい、事務をやらせた方がいい、研究をやらせた方がいい等、それぞれ適性がある。大学、学部、経歴等で勝手に適正を評価しない方がいい。税理士だから、税金のことをやらせた方がいいとは限らない。

第二段目は、世の中、何が起きるかわからないから、常にリスクに備えようということである。無理にリスクを負うことがいいとも限らない。そして、将来を予測し、危険が小さいうちにその目を潰したり、場合によってはリスクを避けて行動するのが良い。そもそもリスクと言うのはどこにあるかがわからないことが多い。いきなり現れることもある。「優秀な人材は、堂の端には座らない」。君主危うきに近寄らずともいえる。

第三段目は、起業するときには失敗することを想定したり、成長軌道に乗ったときにも、その成長が止まったときに事も考えておくべきだ。そして、安定軌道に乗ったときこそ、油断大敵であり、どこかに潜むリスクを見つけ、芽を摘むことが大切。それが成功へのカギと言うわけだ。

[教訓]
〇学歴や経歴で勝手に適正を評価しない方がいい。適正は別にあるのに、やむを得ずその仕事をやって来た人もいるからである。本当の才能を見出し、開花させれば会社にとって大きな戦力になる。
〇リスクには近寄るな。しかしリスクは取れ。
〇創業したら、失敗することも想定せよ。安定したときこそ、リスクに注意せよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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