孫子に学ぶ、「凡そ先に戦地に処りて敵を待つ者は佚し、後れて戦地に処りて戦いに赴く者は労す。故に善く戦う者は、人をいたして人に致されず。」
(現代語訳)
戦場に先に到着して布陣し、余裕をもって敵の襲来を待つ軍隊は楽だが、後れて戦場に到着し、慌てて戦闘に入る軍隊は疲れる。それゆえ、上手に戦う者は、こちらが敵を思うままに操り、敵に主導権を奪われることはない。
(解説)
余裕をもって戦いに備える状態を良いものとし、何事も機先を制して、こちらが主導権を握ることが大切だ。
中学高校の時の部活の試合や大学受験のことを思いだす。試合前にできるだけ早く会場入りし、会場の雰囲気に慣れておく。いつもの力を出せればそれでいいのだが、緊張して普段通りの力は出せない。しかし雰囲気に慣れておくだけでも、普段通りの自分を少しでも取り戻すことができる。
受験も会場の雰囲気に慣れておくことが必要だし、受験開始時間に間に合わないようなものならば、その時間ロスがより緊張度を高める。緊張度が高まるとお手洗いへも行きたくなり、我慢していると集中力に欠ける。
さて、社会人になってからの営業だが、クライアントとの時間は厳守なのだが、会社の同僚で良く営業先に遅れてくるものもいる。その理由は仕事を抱えすぎであって、会社を立つのもギリギリになる、あるいは前の営業先との打ち合わせが思ったよりも長引いている。その同僚曰く、営業先に遅れていくのは営業の勲章だ、くらいに言っていた。確かに営業実績は素晴らしい。
さて、戦国時代であるが、戦場に到着して地形をよく観察しておくこと、一般兵は徒歩による移動であるから、すぐに戦いを始めると体力的にキツイ。それゆえ、戦場に事前に入っておくことは必要不可欠と言える。それを部活の試合とか受験、営業先訪問と一緒にすることはできない。所詮、我々の生きる社会は、どこへいってもその雰囲気に慣れておく必要のないものが多い。むしろプロのスポーツプレーヤーの場合には頂点を極める戦いだから、事前に試合会場に入っていた方がいいだろう。我々一般人は、どちらかと言えば、会場に早く入る以上に事前準備の方が必要だ。試合に勝つためのトレーニング、受験対策勉強であったり。
営業について言えば、相手先との関係にもよるだろう。そもそも礼儀というものもある。ただ、こんなことを言えるのは、日本の商談くらいで、それは交通機関が時間厳守だからだ。例えばロンドンで商談をしようものならば、30分、1時間の遅刻はそれほど珍しいものではない。電車が時刻通りに到着しないのが当たり前の社会だからだ。
今どき、移動で体力を使ったからと言って、その後の仕事に支障が出ることもないであろう。それに遅刻であれば、少しの時間であれば事前に先方に電話連絡でもしておけばそれほど失礼には当たらない。それ以上に重要なことは、事前準備である。ただ、営業も慣れてくると事前準備はしなくなるが。そうなってくれば本物だ。
[教訓]
〇日本の商談における約束時間の厳守は礼儀としての意味。
〇事前準備を行い気持ちに余裕を持たせることが重要。