故に間を用うるに五有り。因間有り、内間有り、反間有り、死間有り、生間有り。
(現代語訳)
間諜を用いるには5種類の方法がある。
(解説)
孫子の5種類のスパイの中では死間が一番シビアだ。敵国に出向き、虚偽の報告を行って、敵国を嵌め、敵国に多大なる損害を与え、その報告が虚偽だと思われたとたんに死罪となる。自分の命を賭けての諜報活動だ。よほど敵国に親族が惨殺され、死なばもろとも、刺し違えても位の狂気にならなければ、とても死間等努めようとも思わないだろう。
この中で、前者3つが敵国の人材、後者2つが内国の人材を活用しようとしたものだ。産業スパイというものが存在するし、アメリカと中国の情報戦では、孫子の時代に顔負けの諜報活動は行われているが、ここではそんな血生臭い話は横に置いておこう。
これを今のビジネスに置き換えた場合、色々な人を情報源にすると言えるのではないだろうか。人との接点というのは多い。身近な例で言えば、ビジネスパートナー、従業員、取引先、同業他社の飲み仲間、銀行、顧客。数上げればきりがない。従業員にしても、以前勤めていた会社では、どんなやり方をしていたの、という聞き方ぐらいはよくしている。それが競合他社のトレードシークレットと呼べるものでない限りは、マナー違反でもない。
銀行員も色々な会社に出入りしているから、個々の会社の内情までは教えてくれないが、今困っていることを話せば、その解決策を他の企業の例で個別企業の名前を伏せて、教えてくれることもある。取引先で三河屋のサブちゃんくらいに仲良くなっておけば、同業他社の内情をさりげなく教えてくれることもあるかもしれない。露骨に効いたらマナー違反ではあるが。
従業員が顧客として同業他社に出入りしている場合だってある。外から見た感想ではあるが、競合他社の内情を知るためのきっかけにはなるだろう。人の数だけ、情報の接点がある。そんな意味で、色々な人との付き合いは大切にしたいものだ。
[教訓]
〇出会う人全てをスパイにせよ。
〇信用関係を築き、聞き方次第では、競合他社の内情に近い情報が得られることもある。