故に諸候の謀を知らざる者は、予め交ること能わず。山林・険阻・沮沢の形を知らざる者は、軍を行ること能わず。郷導を用いざる者は、地の利を得ること能わず。
(現代語訳)
諸侯たちの考え方がわからないのでは、安易に同盟を結ぶことはできない。山林や険阻な地形、沼沢地等の地理的情報がわからないうちは行軍してはならない。その土地に詳しい案内役である「郷導」を活用できないのであれば、その地の利を得ることはできない。
(解説)
事業提携を行う時に相手の真の意図を知らないと提携も安易にはできない。ノウハウを上手いぐらいに盗まれてしまうこともある。
戦争になった場合、攻撃側としては見知らぬ土地で戦わなければならない。行軍中に、谷に差し掛かった時に、左右から伏兵にあるかもしれないし、沼地に足を取られたときに弓矢の攻撃を受けるかもしれない。その時に不可欠なのが地元の地形を知る者だ。そこでビジネスにおける地の利とは、専門分野という意味になる。できる限り、発起人がそのビジネスの専門分野に詳しい方が良い。そうでない場合には事業パートナーが詳しくなければならない。一番やってはいけないのは、事業に責任を負わない顧問や外注先に「地の利」をお願いしてしまうことだ。彼らは報酬をもらうことしか考えておらず、事業が上手くいこうといかなかろうと関係はないから、通り一遍のことしか教えてはくれない。リスクが起こったときに一緒にわが身の如く対処してくれるようでなければならない。コンサルタントは責任を負ってくれないどころか、いざという時には責任逃れをする。
上記の例で行くと、危険地帯を教えるものの、自らは別の場所にいるようなものだ。地形の全部を教え切れていればよいが、その時の地形や天候を見て、リスクの考え方もまた変わることだってある。些細な違いで何か重要なことに気づく場合もある。地の利を知っている者がいれば、事前にリスクに対処することもできるが、リスクが起きたときの対処の仕方も心得ているものだ。最小限の被害で済ませるための対処法を。
ビジネスはその道の専門家であれば、その他の人はどんなに逆立ちしたところで専門家の知識量や経験量には敵わない。「地の利」を知る者は、最低限でも経営者自らか、パートナーである必要がある。そう言った者が身近にいない場合には、絶対にそのビジネスを初めてはならない。そのリスクに対処しきれずに大敗をすることは目に見えている。
[教訓]
〇事業提携も相手の意図を十分につかんでから行うこと。ノウハウを盗まれて終わる危険性もある。
〇経営者自らか、パートナーが地の利(ビジネスで行う専門分野)を知っていること。顧問とかコンサルタントに丸投げしては危険だ。