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現場スタッフに必要な組織的考え方とは何か

故に戦道必ず勝たば、主は戦う無かれと曰うとも、必ず戦いて可なり。戦道勝たざれば、主は必ず戦えと曰うも、戦う無くして可なり。故に進んで名を求めず、退きて罪を避けず、唯民を是れ保ち、而して利の主に合うは、国の宝なり。

(現代語訳)

戦争の原則に照らして必ず勝てる見込みがあれば、例え主君が戦ってはならないと言っても、戦って良い。戦争の原則に照らして勝てる見込みがないときは、例え主君が必ず戦えと言っても、戦ってはならない。そのため、進撃して軍功を上げても名声を求めず、敗れて退却すればその罪を甘んじて受け、国民の財産と生命を保ち、その利益が主君にも合致するようにする。それができる将軍は国の宝である。

(解説)

別の場所で「君命に受けざるところあり」と言っている。この内容はそれをより具体的にしている。代表取締役は会社の全部を見通して、さらに全てを指示するわけにはいかないから。現場のことは現場に任せざるを得ない。昔の戦場では通信に限界がある。そこで現場のわからない君主が、戦地を任された将軍に全て意思決定を委ねざるを得ない。

その判断基準とは、国民の財産が維持され、国民の生命が奪われすぎず、最終的に国や君主のためになるかどうかである。それを合致させることのできる将軍は、まさに国の宝となる。

これらの考え方は、会社組織においても言える。会社組織においては、営業人員に対しても相当の権限移譲がなされるべきであろう。日本の営業パースンはあまり権限を認められていないから、現場で決められないことが多く、「持ち帰らせていただきます」という結論が多い。国内の取引であれば、先方もまた日本の組織だから時間がかかっても大したことはないが、海外の企業にとっては、日本の大企業との取引はストレスになるとよく言われる。現場同士で決められないからだ。それで日本の製品が海外企業に売れなくなっているとしたら、非常にもったいない話だ。営業が会社の宝になりたくても、簡単にそうならない理由がここにある。

権限移譲の基準は、部署の予算をブレイクダウンした個人の予算と絡めて考えればよい。売上基準でなく、利益基準で権限移譲を図るべきだ。商材にもよるが、概ね、交渉内容は数量×価格や支払い条件に集約されるであろう。

この点、ベンチャー企業であれば、社長自らが営業するであろうから、ほぼその場で即断即決ができる。このようなスタイルであれば、海外企業にも喜ばれる。日本のベンチャー企業こそ、海外が主戦場になる時代がやってくるのかもしれない。

[教訓]

〇ある程度の組織であれば、営業人員にも大幅な権限移譲がなされるべきである。

〇権限移譲の際の基準は、個人の予算の利益基準で行え。

〇現場での即断即決ができない限り、海外企業との取引は不利になる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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