孫子に学ぶ、「孫子曰く、兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。」
(現代語訳)
戦争とは、国家の一大事である。人の死生を決める分岐点であり、国家の存亡を左右する道であるから、これを深く洞察しないわけにはいかない。
(解説)
孫子の時代には、戦争というものが、貴族を主兵力とする戦車戦から、国民を総動員する数十万規模の大軍同士への戦いと変わり、それこそ国家を揺るがす一大事になった。ここで大量に人が減ると、国の経済も揺るがすことになる。それゆえ、上に立つ者はこれを深く考え、相手の国の状況を事前分析する必要があると孫子は説いた。
この点に関しては、「起業とはあなたの大事なり」と言えよう。サラリーマンの頃は上司から与えられていた仕事をこなしていれば、お金には困らなかったし、お客も営業が取ってくるし、実の回りの世話(経理や給料計算等)も自分以外の誰かがやってくれた(経理人事が仕事であれば自分でやっていただろう)が、しかし、起業をすれば自分で稼がなければならなくなるし、色々なことを自分でやらなければならなくなる。
そもそも自由を手にして喜んでいる場合ではなく、お客を自ら開拓していかなければならない。そうしないと生活費が確保できないのだ。結婚して妻や子供がいれば、それこそ家庭の大事ともいえる。そういう状況であるから、起業したら、最低限の生活ができるように何とかしなければならない。大失敗は許されないのだ。
大失敗しないために必要なことは、事前準備だ。今までサラリーマン時代に経験を積んでこなかったようなアイデア企業の場合には、あなたの考えるアイデアが本当にニーズのあるものなのかどうかをマーケティング調査しなければならない。身近な人へのヒアリングも大切だが、そのときに、利害関係者は避けよう。今の会社の上司に独立を伝えればやめろと言われるのがオチだし、嫁にも今の会社にいてと言われるのがオチだ。あなたに今の会社をやめてほしくない人からしてみれば、いいことを言うはずがない。
こういうときこそ、厳しい意見を忌憚なく言ってくれる友の存在はありがたい。ただ、ダメだねと言う人ではなく、こうしたらいいんじゃない、と建設的にアドバイスしてくれる人が良い。
概ね行けると確信を持てるレベルになれば、どれくらいお金をかけるかどうかはともかく、より一般消費者や潜在顧客に対するヒアリングを行いたい。モニター調査でもよいかもしれない。多くの人から意見をいただくことでよりビジネスを客観化していこう。
事前準備で一番やらなきゃならないことは、顧客ニーズがあるか、どれくらいあるのかを把握することだ。相手(孫子の例で言えば攻撃する国のこと)を知ることが重要だということなのだ。兵法書は、戦いのテクニック以上に、戦争を始める前に何が必要かが強調されている。
[教訓]
〇事前調査は不可欠
〇利害関係人からの意見は聞きすぎるな。
〇単にダメ出しではなく、建設的に意見を言ってくれる人からアドバイスを受けよ。
〇事前調査の目的は、顧客ニーズがあるか、どれくらいあるかを知ることだ。