孫子に学ぶ、「激水の疾くして、石を漂わすに至る者は、勢なり。鷲鳥の撃ちて、毀折に至る者は、節なり。是の故に善く戦う者は、其の節は短なり。勢は弩を彍くが如く、節は機を発するが如し。」
(現代語訳)
水が激しく流れて石をも漂わすまでに至るのは、勢いである。鷹のような鳥が急降下して獲物を捕らえ、骨を砕くまでに至るのは、節目である。それゆえ、戦い上手な者は、その勢いを直前まで蓄積し、そのエネルギーを発する節目は一瞬である。勢いは、殺傷力のある弓の弦をいっぱいまで張るようなもので、節目とは弓の引き金を瞬間的に引き、矢を発するようなものだ。
(解説)
石は川の底に沈むものだが、川が勢いを持つと石すらも運ぶエネルギーを持つ。次に、鷹が獲物を捕らえ、骨を砕くのは絶妙なタイミングである。もう一つ例を挙げているが、弓をいっぱいまで引っ張るのはエネルギーで、矢を放つのはタイミングであるということ。つまりここでは組織の持つエネルギーとタイミングのことを言っている。
組織の持つエネルギーは個人では敵わない。だからこそ人は組織化する。人がいくら一人でギターを弾いたところで、オーケストラの演奏にはリスナーは圧倒されてしまう。もちろんどちらが好きかどうかは個人の趣味だが。エネルギーの大小で言えばオーケストラに分がある。しかし烏合の衆が集まっても何のエネルギーも持たない。一つの方向性に組織のエネルギーを仕向けなければならない。その役目を担うのが、オーケストラであれば指揮者であり、コンサートマスターになるが、会社であれば経営者、あるいは経営陣ということになる。
事業にはどうしてもタイミングというものがあって、どんな事業でも今が最高ということは稀だ。ただ、そのタイミングを見計らったときに個人であれば、動こうと思ったときに動けるが、組織であれば、社長が外号令をかける等しなければ、動きようがない。そのタイミングを逸したときには、大企業であればそれだけ投資もしているであろうから、無駄になってしまう。
せっかくエネルギーを持った個人がいても、タイミングよく組織がスタートしなければ、組織の集合体としてのエネルギーを束ねられないことになる。組織を有効に動かすにはエネルギーとタイミングなのだ。
[教訓]
〇組織が個人より優れているのはそれだけ大きなエネルギーを持っていること。
〇タイミングを見計らって、一気に組織力を統括しないと、無駄なエネルギーとなってしまう。