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事業が順調なとき、順調でないときの上手い資金の扱い方とは

是の故に軍に輜重無ければ則ち亡び、糧食無ければ則ち亡び、委積無ければ則ち亡ぶ。

(現代語訳)

軍に兵器や食料等とそれを輸送する部隊がなければ戦いに敗れ滅びる。

(解説)

輜重(しちょう)とは、前線に輸送、補給するべき被服、武器、弾薬等の軍需品の総称である。糧食(りょうしょく)とは、備蓄・携行した食糧のこと。そして委積(いし)とは、穀物などの蓄えのことである。

鎧や刀は戦いでは壊れるもので、さすがに素手では戦えない。また食べ物がなければ、そもそも戦えない。それにそれをしっかりと運んでくれる部隊も必要だ。これらがなければ意気さには勝てない。当たり前の話だ。

現代のビジネスに置き換えると、モノとカネである。当然兵隊の補給とも考えれば、スタッフも必要だ。いわゆる経営資源のことである。現代社会では、よほどのことがない限り、お金を払えば何でも揃えられる。つまり人も雇えるし、設備も製品も変える。だから要するにカネだ。

資金調達にはタイミングが必要で、必要以上のおカネを持っていればいいというわけでもない。事業が軌道になってきた場合には、余剰資金を持たずに事業に投下していった方が良い。何故ならば、好きなタイミングで資金調達をすることが可能だからだ。利益が出ていて、資金繰りも順調で、返済原資が確保されていれば、銀行はいくらでも貸してくれる。しかし逆に事業が順調でない場合、あるいは順調かどうかまだ明確でない場合には、タイミングよく資金調達ができるとも限らないから、できるだけできる時にしておいた方がいい。例えば創業間際のときは、実績が明確ではないだけに、ある程度多めにしておいた方がよい。創業後に資金調達をする場合には、業績が悪く、資金繰りに困ってからしようとする人が多いから、金融機関からすれば改善してからお越しくださいで終わってしまう。

余裕資金とは正直なところ、業種によって異なるが、アメリカのマッキンゼー・アンド・カンパニーがS&P500の全企業(金融機関を除く)の現金保有高を調査し、現金の保有が最も少なかった企業では売上の2%を少し下回る程度としている。これを未上場企業が真似をしてしまってはよくないが。参考にはなる。

当然カネがあればいくらでも経営資源は調達できる、と言い切れるものではなく、特注品であれば、ある工場からの供給が止まってしまっては、製品自体が製造できない、商品が販売できない恐れもある。仕入をまとめた方が割引も効くことは確かだが、リソース供給のリスクヘッジを考え、いくつかの工場や業者で依頼することも考えておくべきだ。

ヒトについても、近年は利益を出すために、少人数で会社を運営することを考えざるを得ないが、仕組みを工夫することで、ヒトを減らしても回る仕組みづくりが必要だ。現場のことは現場の人間が一番よく知っていることは確かだが、人を減らすと上が決めたからには、上が率先して仕組みづくりをすべきだ。人を減らしておいて現場に仕事の効率化を図らせるのは、かえってミスを誘い、事業リスクを高めることになる。結局は代表や役員が外部に対して責任を負わなければいけないからだ。

[教訓]

〇人、モノ、カネのロジスティクスは徹底させよ。戦うべきときに経営リソースが不足しないようにすることは経営陣の仕事だ。

〇事業が順調なときは、余剰資金も少なくせよ。

〇事業が順調でないときは、余剰資金を厚くするように努力せよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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