孫子に学ぶ、「三軍既に惑い且つ疑わば、則ち諸侯の難至る。是れを軍を乱して勝ちを引くと謂う。」
(現代語訳)
軍隊が判断に迷い、命令を疑うようになれば、近隣の諸侯たちが攻め込んでくるという災難が生じる。これを軍隊の統率を混乱させて、自ら勝利を取り去ると言う。
(解説)
これは、君主と軍が生み出す組織内部の混乱について述べている。君主は将軍に現場の指揮権を委ねているが、ときに口出しをして軍を混乱に陥れてしまうことがある。これを原因として勝利の機会を手放してしまう。
軍隊の統制を取れなくするための君主の行いとは次の3つである。
部下としても二人の上司がいて、それぞれが別の指示を出していたら、どちらの言うことを聞けばよく分からなくなり、部下が混乱する。部長の言っていることと課長の言っていることが違ったら、社長の方針と部長の方針が違ったら。社員集会で社長がプレゼンしていた会社の経営方針と、部長の方針が明らかに異なれば、部下は一度部長に、それって社長の言っていたことと随分違うんですが、と確認しようがある。時には本音と建前が出てくるかもしれないが、経営方針で本音と建前は困る。
建設会社のスローガンである、「安全第一」ならば、安全は大事だが、作業効率も大事、といった割り切りもありかもしれないが。
部長からも指示があり、同時に課長からも指示があった場合には、もう混乱するしかない。どちらの言うことを聞いたらいいんですかと、どちらも上司だから拒否もできない。もっとも上長の意見を聞いておけとなるかもしれないが、もやもやは消えない。それに上司に対する信頼度もなくなる。
いずれにしても、自社の置かれた状況を認識していたとしても、内部事情を知っていたとしても、もし経営方針の変更の必要があるのであれば、一度、部長等の役職者を呼びつけ、経営方針を全員で共有した上で、改めて、部長などの役職者からもう一度部下に対して直接命令をさせるのが妥当だろう。
また、指揮権を取り上げるのも言語道断だ。一度委任したのであるから、指揮権を持つ部下を信じるべきである。こういう状況においても部下の組織に対する信頼を失い。組織としてのまとまりがなくなってしまう。
[教訓]
〇指揮命令系統を一本化せよ。
〇経営方針の変更を感じた場合には、一度経営会議を開くなどして、共有した上で、部下へ直接指示するのは、直接の上長とすべきである。