孫子に学ぶ、「古の所謂善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦う者の勝や、智名もなく、勇功も無し。」
(現代語訳)
昔の戦争上手は勝ちやすい敵に勝つ。そのため、戦上手の者が勝つ時には、知恵者と言う名声が立つこともなく、勇気ある軍功と評価されることもない。
(解説)
戦争が上手い者は、必勝の勝算が立った時にしか戦わない。そこには優れた戦術とか勇敢にたたかったという評判が立つことはない。優れた戦術や勇敢に戦わざるを得ないときには、十分な勝算がなかった時に起きる。そこで戦術や勇敢さが目立つことになる。それゆえ真の天才軍師は無名の存在にすぎない。
野球でも本当に守備の名手はファインプレーが少ないものだ。ピッチャーの球筋とバッターのスイングを予想して予め自分の守備のポジション取りをしておく。そうすると咄嗟に動くことはないので、素人目からすれば当たり前のプレーにしか見えない。ただ、ファインプレーは見ている者を感動させる。どうしてもその方が価値あるものに見えてしまう。それはショービジネスなのだから、派手なパフォーマンスも良いと思う。
戦争の場合には人の生き死にが関わってくるし、そこにドラマなんてものは不要だ。その戦に勝利した司令官が有能だと言われ、どれだけの兵士がその作戦で犠牲になったかと思うと、複雑な心境になる。犠牲者が少なくて済んだ、今回の指揮官は立派だとは一面的な見方であり、遺族にとっては大切な兵士が一人命を落としたことには何ら変わりがないのだ。
ビジネスによっても、いくらの借金を抱えて復活したという方が、人からの注目を浴びるが、本当に凄い人は、目立つこともなく、ラッキーパンチに期待することもなく、ただコツコツと地味な仕事をこなし、結果的に富を蓄積した人が多い。そこには他人から見て何もワクワクするものは感じられない。お涙頂戴の苦労話もあまり聞けない。ジェットコースターのような人生の方が、他人にしてみれば面白い。だからと言って浮き沈みが激しい人の方が優秀だともいえない。そんなことよりは、勝算の高いビジネスを見極めて、コツコツやった人の方が凄いと思う。
本当に凄い人と言うのは、世間ではそれほど有名でない人が多い。いわゆるフィクサーと言う人たちは知る人ぞ知るであり、表舞台では見ることがない。こういう人の方が傍から見ているとかっこいい。だから、名声がある奴なんてものはたかが知れていると思った方がいい。どうせ名声しか自慢できないだけの人間なんだろうと。ただ、名声もショービジネスには必要だ。
[教訓]
〇勝算の高いビジネスを見極めてコツコツやれ。
〇世間で騒がれない人の方が、実は本当に凄い人が多い。
〇優秀だと世間で言われている奴の方が実はたいしたことがない。平凡こそ最強。
〇ショービジネスでもない限り、派手なパフォーマンスは狙うな。