孫子に学ぶ、「善く兵を用いる者は、役は再びは籍せず、糧は三たびは載せず。用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食たるべきなり。国の師に貧なるは、遠き者遠きに輸ればなり。遠き者遠きに輸れば即ち百姓貧し。」
(現代語訳)
巧みに戦争をする者は、民衆に兵役を二度課すことはなく、食料を三度補給することはない。食料は当初は国内で生産して前線に送るが、敵地での現地調達を原則とする。そうすれば、軍隊の食料が困ることはない。戦争のために国家が疲弊するのは、遠征軍が食料や物資を遠方に輸送していくからである。敵中深く進攻した遠征軍に対して、長距離輸送を繰り返せば、国民はその負担に窮乏し、貧困を強いられる。
(解説)
事業家は二度も三度も人に仕事を依頼して、その結果上手くいかないということはないということをしてはならない。ましてや上手くいかないからと言う理由で、資金を持たせるために三度資金調達をしてはならない。二度仕事を依頼するとき、三度資金調達するときには、上手くいったから拡大するときだけである。上手くいかないときには依頼してもいけないし、資金調達してもいけない。もし資金調達しなければやっていけないというのならば、自分の支払いを減らすなり、支払いを伸ばすなりして対処すべきだ。そういうことをやらずに安易にお金を借りに行ったら、負債が増えるだけだ。まずは自分が無能であることを知れ。
お金を借りる時には二つの気持ちがある。もうどうにもならないからお金を借りたくなるケース、もう一つは自分はここまでやれるはずと根拠のない自信があるケース。どちらもやめておけと言いたい。
上記で言うところの食料の現地調達とは、別の場所でお金を借りることではない。売上を上げることなのだ。売上を上げる能力がないことを棚に上げて、自国の国民を窮乏させてはいけない。当然、戦場に出てきた自国の兵士を窮乏させてはいけない。もう食料がないので、自分で何とかしてくれ、といったところで兵士のできることは限られている。草木を食べるしかない。それでは兵に戦えとは言えない。たまにそういうバカ経営者がいるが、サッサと退陣して二度と戦争の先頭に立つなと言いたい。
勝機がなければ、一度退却をするのもまた将の判断だ。何が何でもビジネスを続けることが全てではない。無能はビジネスをやっているだけでも、多くの人を犠牲にする行為だ。利益を生まないから、お金がないからと言って、お金を借りる。借りに来られた方がいい迷惑なのだ。まずは自分の無能を知り、謙虚になること。そうすれば、始めてなぜ失敗したのかを知ろうと思える。自分は天才だとか、選ばれているとか意味不明な考え方を持ってしまうと、永遠に反省しない。反省しない者には成功はない。
[教訓]
〇二度仕事を依頼するとき、三度資金調達が必要なときは、仕事が上手くいかなくて、お金がなくて困ったときではない。上手くいって仕方がないときに依頼せよ。
〇起業家はまず謙虚になれ。そうすればなぜ失敗したかの原因が見えてくる。