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物事の本質の掴み方

衆樹の動くは、来たるなり。衆草の障多きは、疑なり。鳥の起つは、伏なり。獣の駭く者は、覆なり。塵高くして鋭き者は、車の来たるなり。卑くして広き者は、徒の来たるなり。散じて条達する者は、樵採なり。少なくして往来するは、軍を営むなり。

(現代語訳)

多数の樹木が動くのは、敵軍がその中を進撃している。障害物のように草が伏せてあるのは、仕掛けがあると疑わせ、こちらの進撃を妨げようとしている。鳥が飛び立つのは敵の伏兵がいる。獣が驚いて走り去るのは、敵軍の奇襲攻撃がある。砂埃が高く上がるのは戦車部隊が疾走してくる。低く広い砂埃が立ち込めるのは、歩兵部隊が迫ってくる。砂埃が細く立ち込めるのは、燃料となる薪を採取している。砂埃の量が少なく左右に往来しているのは、敵が軍営を張ろうとしている。

(解説)

作戦行動を起こした後で、自軍の周囲と進撃予定路付近について、索敵が不可欠である。そこで得られた情報をもとに、迅速かつ的確な行動を取ることが戦争の勝敗を分ける。ここでは敵の布陣を駐屯の様子を察知する方法を説いている。

上記例において、敵軍の進撃を目で見ることは難しい。それを多数の樹木が動くことで予想する。敵の伏兵もあらかじめ予測するのは難しいが、鳥が飛び立つことでそこに伏兵の存在を推定することはできる。

ビジネスにおいても索敵行動は不可欠である。競合の出方、顧客の行動など。このときに索敵できることは、そのほとんどが行動の結果だけである。だが、観察眼と今までの経験、そして創造力を持ってすれば、大抵のことはわかる。物事にもよるが、桶屋が儲かったらどこかで風が吹いたんだな、とわかる創造力が必要なときもある。

近年、金融機関が与信として、貸出先のツイッターを参考にしようとするところもあるようだ。一般人にとってみれば、風が吹けば桶屋が儲かるように見えるのかもしれないが、ツイッターにはお客の評判に溢れている。今、業績が良かったとしても、売上が上がると店が手抜きをしだす、そうなるとあの店はダメだねと評判が広がり、最近は口コミがSNSで伝染する。悪い評判が広がれば、そのうち業績も悪くなる。ツイート数とかいいねが減ってくれば、ブームも下火と判断することができる。逆に言えばよい評判が立てば、そのうち業績も上がって、貸出先として魅力が出る。

売上を決算で把握しようと思えば年に一度の決算を待たなければならない。既に取引があれば月次試算表を徴求することもできるだろうが、貸す貸さないの判断に、ツイッターを用いようという試みは面白い。

[教訓]

〇目に見える事象を想像力を働かせ、その本質を突き止めよ。

〇事象から物事の本質を掴む能力が高めれば、競合に先んじて勝機を得ることができる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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