故に兵を用うるの法は、其の来らざるを恃むこと無く、吾が以て待つ有るを恃むなり。
(現代語訳)
戦闘を行う場合の原則としては、敵が来襲しないことを頼みにするのではなく、敵がいつ来襲しても良いだけの備えを頼みとすべきである。
(解説)
ある程度会社が成長していった後に、そのピークの売上がずっと続くと考える傾向がある。競合がいないと、今後とも競合は現れないと思いがちだ。しかしマーケットというものは儲かると思ったら、参入障壁が高くない限り、新規参入は必ずある。後はいつあるかだけの問題だ。それゆえ、敵はやってこないという楽観的な推測をしてはいけない。あくまでも敵はやってくるという推測をして、できる限りの準備をしておかなければならない。
ここで飲食店において、繁盛店があるとしよう。仮にその店がイタリア料理店としてみる。いくつか考え方がある。同じ業種と価格帯であれば差別化が難しいから、今回は近隣地域では参入するのはやめようと考える人もいる。既に繁盛店を営んでいれば、自分にできるかどうか不安になり、委縮してしまって、一種の参入障壁になる。逆に、そこにはイタリア料理が好きな住民が住んでいる、あるいは客が訪れるから、競合店はあるが、儲かるなら参入しようと考える人もいる。同じ価格帯であれば上手くいくかもとして、イタリア料理に対抗してフランス料理にしようかと考える人もいるだろう。結局のところ、競合店があったとしても差別化ができるかできないかという話だが、この世には色々な人がいるから、躊躇する人も、イケイケゴーゴーという人もいる。飲食店の場合には、前からある店が、自分たちの店にとってのマーケティングにもなることもある。当然、何も考えずに、出店したいからする、不動産屋に勧められた空き店舗があるからする、そういう人だっている。でも後から参入しても、商売上手で、客が奪われる心配がないとは言えない。
飲食店以外でも、ビジネス全体的に、以前にそのビジネスで商売をしている人がいれば、少なからずマーケットがあることを示していると言える。
後は競合に敵失があり、自社がマーケットシェアを拡大できたら、運が良かっただけなのに、そこで拡大したシェアが今後とも続くと思いがちだ。しかし競合がそのまま転がるように落ちていく会社もあるが、転がらずに復活する会社もある。敵失に頼ってはいけない。運ではなく、あくまでも実力でシェアを獲得しなければ、続かないのだ。
いずれにしても、敵がいなくてもいつ敵が来ても大丈夫なように備えるべきであると言える。それゆえ、ビジョンは楽観的であっても、備えは悲観的でなければならない。
[教訓]
〇繁盛していれば、必ず新規参入者が現れる。いつ現れるかだけの話だ。
〇差別化ができれば、競合は敵にあらず。
〇新規参入時に、既存会社が儲かっていれば参入すべし。
〇ビジョンは楽観的に、備えは悲観的に。