凡そ軍は高きを好みて下きを悪み、陽を貴びて陰を賤しみ、生を養いて実に処る。軍に百疾無くんば、是を必勝と謂う。丘陵・隄防には、必ず其の陽に処りて、而して之を右背にす。此れ兵の利、地の助なり。
(現代語訳)
軍隊は高地に布陣するのが良く、低地はよろしくない。日なたを良しとし、じめじめした湿地を避けるべきである。兵士の衛生状態に注意し、食料や燃料が補給できる場所に駐屯せよ。これで軍隊に病気が生じなければ、必勝の軍隊と言える。丘陵や堤防では、日当たりの良いところに陣取り、必ず右後方となるように位置取りせよ。これが軍において良い立地である。
(解説)
軍隊の布陣や駐屯について論じている。兵士が日なたがある場所にいて、食料や燃料の補給がなされていれば、病気も起きない。伝染病が最悪だ。集団感染して、戦どころではなくなってしまう。そのため兵士の衛生状態に注意を払えということなのだ。
働きやすい環境が整備されれば、従業員のモチベーションは高まる。当然のことながら作業効率が高まり、離職率が低くなり、会社の業績も上がる。さて、従業員にとって働きやすい環境とはどのようなものかと言えば、①人間関係が良好で会社の雰囲気がいい、②評価制度や人材育成制度がしっかりしている、③休暇を含めた福利厚生が充実していることである。
最近問題視されているのは、長時間労働である。これは心と体に負担をかけ、家庭生活との両立を困難にする。家庭生活を犠牲にすると、仕事のパフォーマンスにも悪影響が出てくる。
会社の雰囲気とは、人間関係である。社員同士でコミュニケーションが取りやすければ会社全体の雰囲気も良くなる。相談しやすければ仕事が停滞することもない。コミュニケーションが取りやすければ、従業員の健康問題に早めに対処でき、唐突な離職を防ぐ効果もある。
労働時間の適切性は言うまでもない。残業は当たり前、終電は当たり前、土日出勤は当たり前では、良い健康状態は保たれるわけがない。働きやすい職場では一人に負担がかからないように対処されている。
また、会社が全体的にポジティブな姿勢礎持っていることも職場の良い雰囲気に貢献する。
評価制度や人事育成制度も重要だ。仕事の成果が公平に評価されれば、働きやすさや働き甲斐につながる。上司の依怙贔屓があるとやる気をなくす。また、教育体制の整備も不可欠だ。キャリアの段階に応じた研修もあると望ましい。
就業時間後に速やかに帰りやすい雰囲気か、有給休暇は取りやすいかも重要だ。その他には特に女性社員だが、産休や育休後復帰しやすい環境であれば、その職場で働くインセンティブにもなる。何気に、通勤時間を減らすための住宅手当も良い制度である。それに資格取得に対する支援制度も望ましい。従業員のモチベーションアップにつながる。
以上のように、上司や同僚とのコミュニケーションが取りやすい、自分の仕事の成果やスキルアップがインセンティブ(報酬制度)とリンクしている、そして休みやすい会社が働きやすい職場と言える。
メンタル的にもフィジカル的にも健康であれば、従業員は思う存分に働ける。世間に言うブラック企業とは正反対であることがわかる。
[教訓]
〇働きやすい職場は、会社の業績をアップする。
〇働きやすい職場は、同僚や上司とコミュニケーションが取りやすいこと、自分の業績やキャリアアップがインセンティブとリンクしていること、そして何よりも休みが取りやすいこと。
〇従業員がメンタル的にもフィジカル的にも健康であれば、会社にとって望ましい、優れた業績を生み出す。