故に将、九変の利に通ずれば、兵を用うることを知る。将、九変の利に通ぜざれば、地形を知ると雖も、地の利を得ること能わず。
(現代語訳)
九種類の臨機応変に対処することの利益をよく理解していれば、軍隊を動かすことを知っているといえる。それらを理解していなければ、たとえ地形を知っていても地形の利を活かすことができない。
(解説)
九変とは、変化が激しいこと、そしてここでの地形とはマーケットと解釈することができよう。現代流に解釈すればマーケットを知っていたとしても、変化に対応できなければ、利益を獲得できないということを説いている。
仮に以前、その分野での成功者がいたとしても、マーケットの状況はすぐに変わるから、以前と同じやり方では儲けることができない。証券投資、FX、不動産投資等、以前成功した方法はこうでした、ですからこうすればいいんですと、お節介までもその人の成功したときの方法を教えてくれるが、その時はその方法で良かったんでしょう。今のやり方はどうすればいいのですか、と質問しても、以前のやり方しか教えてくれないし、確実に、そのやり方でやったら、失敗する人の方が大多数になる。
もちろんその成功した方法の中から、今でも使える方法がないとは言えない。聞いておくだけの価値がないわけではないが、あえて言おう。お金を払うほどの価値はない。中には同じやり方で上手くいく人もいるかもよ、程度に捕えておいた方がいい。
投資系の話でもトレンドは変わりゆくが、現代社会は、ドッグイヤーやマウスイヤーと言われ、通常のビジネスでも顧客のニーズはすぐに変わる。昔、上手くいってしまうと、その方法に固執してしまう。そしてその方法を繰り返すしか能がなくなってしまう。せっかく稼いでも、そのうち全ては水の泡になる。
だから昔どうだったということ以上に、これからどうなるのか、そして変わったときに、自分のやり方を少しづつ、今のマーケットに照らして変化させる、柔軟性や機敏さの方が重要である。依然と比較して、新規参入コストが激減し、競合が多数存在することも原因の一つだろう。また、試行錯誤のコストもまた下がっている。だから微妙に変えた方法を無数にチャレンジできる。対するこちらも、微妙に変化させ、次から次へと手を打っていかなければならない。
[教訓]
〇マーケットを知っていること以上に、マーケットの変化に対応せよ。
〇顧客ニーズもすぐに変わる。顧客の声を聴き、そのニーズにすぐさま答えよ。
〇試行錯誤のスピード、柔軟性や機敏さが、これからのビジネスには求められる。