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別種の異能を組み合わせるのが組織のメリット

それよく攻むる者は敵その守る所を知らず。よく守る者は敵その攻むるところを知らず。故によく攻むる者は兵革をもってせず、よく守る者は城郭をもってせず。ここをもって高城深池はもって固きとなるに足らず。堅甲鋭兵はもって彊きとなすに足らず。敵、固く守らんと欲せば、その備えなきを攻む。敵、陣を興さんと欲せば、その不意に出づ。我往き敵来たらば、謹んで居るところを設く。我起ち敵止まらば、その左右を攻む。その敵に合するを量り、先ずその実を撃つ。守る地を知らず、戦う日を知らず、備うべき者衆くば、専ら備える者寡し。廬をもってあい備え、彊弱あい攻め、勇怯あい助け、前後あい赴き、左右あい趨り、常山の蛇のごとく、首尾俱に至る。これ兵を救うの道なり。

(現代語訳)
攻撃の上手な者にかかると、相手はどのように守っていいかわからなくなる。守りの得意な者に係ると今度はどう攻めたらいいかわからなくなる。攻撃の上手なものは武器を頼りにせず、守りの得意の者は城を頼りにしていない。つまり高い城と深い堀をもってしても、守りを固めたことにならず、鎧を着て鋭い武器を持っていたとしても、それだけで強い軍隊になるわけでもない。敵が守りを固めたら、手薄なところを攻める。敵が陣を払って動き出したら、不意を突く。敵味方双方が出動したら、地の利を選んで陣を敷く。味方が出動したのに敵が鳴りを潜めている場合は、左右両翼を攻める。敵が数か国の連合軍であれば、主力を叩く。
地の利を知らず、時の利もわきまえず、敵の攻撃に備えようとすれば、兵力の分散を招くだけである。強者、弱者、勇敢な者、臆病者を組み合わせ、前後左右の連携を確かめ、常山の蛇のごとく、全軍一体となって機敏と行動すべき。これが兵卒の損害を最小限に食い止めるコツだ。

(解説)
ここで常山の蛇とは、孫子が述べたように、「常山にすむ蛇は、首を打たれれば尾が助け、尾を打たれれば首が、胴を打たれれば首と尾とが一致して助けたという」ことから、先陣・後陣、左翼・右翼が相応じて攻撃・防御に協力し、敵に乗ずるすきを与えないような陣法のことをいう。どこを攻撃されても、組織全体でカバーして、敵の攻撃を寄せ付けないことをいう。

組織全てが優秀な人材とは限らないため、優秀な人材、そうでない人材等がお互いカバーしあって、色々なプロジェクトを手掛けていく。全てにおいて苦手な人とか、全てにおいて得意な人はいない。何かが得意で何かが苦手であれば、組織でそれを補って、強力な組織を作り上げていけばよい。

つまり組織を構築するにあたって、似たような能力のものを集めてしまってはいけない。多種多様な人間がいていい。それが組織なのだから。

[教訓]
〇あることが得意で別の事が苦手という多種多様な人材を採用して、組織としてそれらをカバーしあえるようにすればよい。
〇決して似たような能力のものを集めたり、似たような考え方のものを集めたりしない方がいい。組織を硬直化させるだけでなく、弱点を生む可能性がある。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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