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経営にスピードとダイナミクスを生む権限の設定とは

それ将たる者は、人名の県かるところ、成敗のつながるところ、禍福の倚るところなり。しかして上にこれに仮すに賞罰をもってせざるは、これなお猿猱の手を束ねて、これを責むるに騰捷をもってし、離婁の目に膠して、これをして青黄を弁ぜしむるがごとし、得べからず、もし賞移りて権臣に在り、罰主将に由らざれば、人かりそめにみずから利とし、誰か闘心を懐かん。伊・呂の謀、韓・白の功ありと言えども、みずから衛るあたわず、故に孫武曰く、「将の出づるや、君命に受けざるところあり」、亜夫曰く、「軍中、将軍の命を聞きて、天子の詔あるを聞かず。」

(現代語訳)
将軍は、部下の命を預かっており、国の命運を左右する重要な存在である。もし君主が将軍の任命にさいして、賞罰の権限を委譲しなければ、猿の手を縛り上げて早く木に登れと言い、離婁(中国の古伝説上の人。視力がすぐれ、百歩離れた所からでも毛の先がよく見えたという。離朱のこと)の目をにかわで閉じ合わせて青と黄を見分けろというようなものである。軍の統率 など、どだい無理な相談なのだ。
仮に賞罰の権限が権臣の手に移って、将軍の手にないならば、部下は自らの利益のままに行動し、本気で戦おうとしなくなる。そうすれば将軍は伊尹や呂尚のごとき智謀を備え、韓信や白起のごとき武勇の持ち主であったとしても、自分の身を守ることですら覚束なくなる。
孫武が「将軍はひとたび出演すれば君命と言えども無視できる」また、漢代の将軍周亜夫が「軍中では将軍の命を聞き、天子の詔を聞かず」と語った。

(解説)
一定程度の役職には、独断専行権を与えた方が、スムーズに進む。もちろん何でも好き勝手にやれということではなくて、会社の大まかな経営戦略がぶれないように、各人の責任範囲を決め、役職に応じた権限を与えるということだ。代表取締役社長ですらも、実は何でもかんでもできるわけではなく、一定以上の権限については、株主総会で決議しなければならないことになっている。

今後のビジネスにおいては、臨機応変の対応を迫られることが多いため、会社へ持ち帰っていると経営上の機動力に欠くことになる。フレキシブルにスピーディーに対応することが今後の経営に求められたことになると思われる。それは個々人に任せられる上限まで任せる姿勢だ。

[教訓]
〇独断専行権の与え方を決めよ。リスクコントロールとも照らし合わせて考えよ。
〇フレキシブルにスピーティーに動くことが今後の企業経営に求められたこと。それは現場の独断専行権なくしては、達成できない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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