「あなたが今まで、どれだけの金を手にしたのか・・・それを知ろうとは思わん・・・だが、カネはしまい込んでおいても何の価値もない・・・それを使ってこそ、価値があるのは、当たり前の話だ・・・だが、あなたは当たり前の外にいる人・・・」
(ストーリー)
東堂が古巣の丸菱物産に呼ばれ、山岸常務の話によると、南沙諸島の石油開発にあたり、領有権に対して200億ドルの開発資金が供与され、その出所がゴルゴの資金、つまりG資金であるという。ゴルゴは特定の国家に対して投資することはあり得ないが、資金の乏しいはずの国々が積極的に南シナ海への軍備投入を行い始めた。ゴルゴと取引をしたことがある東堂にその真偽を確認してほしいということだが、秘密を知ろうとしたら殺される。
東堂は無理を承知でゴルゴにコンタクトを取った。そしてゴルゴに対して、その件を伝えた。ゴルゴは東堂に自分に情報を伝えた理由を尋ねる。藤堂は興味本位と答えた。しかしゴルゴとの会話の中で虚偽の情報であることは分かった。
ゴルゴは調査を開始した。ベトナムの国家計画部副議長から南沙の領有化プランやG資金について、フィリピンからアメリカが基地を撤退した理由、石油開発業者から開発の真意。そうして、ゴルゴはこの計画を立てた人物フォスターのところにたどり着いた。フォスターは、過去の独裁者の資金や隠匿資金のようなその存在が信用できないものは財源として好ましくない。そうなると消去法でG資金が望ましい。さらにフォスターは、相手が単独や少数の人間であれば、報道から守れたが、大多数の場合、全員を殺害できやしないと、ゴルゴに言う。ゴルゴはフォスターを殺害せずにその場から立ち去り、フォスターはゴルゴに勝利したと考えた。
ゴルゴは自らの資金を国連等に寄付した。それが全世界にニュースとなり、G資金はなくなる。それに伴い、資金源の根拠を失ったフォスターの計画は崩壊した。それをニュースで東堂が見た。ゴルゴは全てを捨て去ることで自分の生き方を守ったと感じた。また、藤堂の下には1億円が振り込まれていた。情報提供料であろう。また、フォスターも別荘の爆発に巻き込まれて死んだ。
(解説)
「潮流激る南沙―G資金異聞―」の一幕である。お金を稼いでため込んだら、それは守銭奴である。稼いで使いまくったら、少なくともそれを事業で使い切ったら、間違いなく事業家である。ため込む必要があるのは、欲望というよりはもはや稼ぐ自信がないからだろう。稼げる自信があれば、今、使い切ってもまるで問題はないはずだ。ケチになり始めた事業家がいたら、ケチになったからみんなに嫌われ、事業がうまくいかなくなったのではなく、もう稼ぐ自信のなくなった、過去の人だと思っていい。守りに入り始めたら事業家は終わりだ。稼ぐ、使う。社会のキャッシュフローを作るのが事業家である。
[教訓]
〇事業家とは社会のキャッシュフローを創造する人物のことである。
〇稼いで貯めこみ始めたら、もはや稼げない、自信を失った人である。