「ヌオールズはチェスの好きな男だ、と聞いている・・・そんな男の仕掛けた罠の中で・・・下手にもがいては、術中に陥るだけだ・・・成り行きに任せてみよう・・・」
「焦って墓穴を掘るよりも火中に栗を拾う・・・それでこそ・・・勝負師だ!!・・・」
「奴がお前を雇ったのは、本で言うなら参考書を手に入れようとしただけに過ぎん・・・奴にとって、お前の送った情報は一つの意見に過ぎんのだ・・・」
(ストーリー)
ゴルゴが登場する飛行機が欠航になった。そして依頼人のウェルトン卿が何者かによって殺害された。その秘書がゴルゴの待つ空港へやって来る。秘書はウェルトン卿の依頼を受けてくれと頼むが、ゴルゴは、飛行機の欠航とウェルトン卿の死亡が偶然か否かについて、確認してから受けるかどうか決めると、ひとまず秘書を帰した。ゴルゴは情報屋のジミーにウェルトン卿の最近の動きを調べさせた。
ジミーの情報によると、ヌオールズがゴルゴに対して罠を仕掛けていることを知らせた。ヌオールズは娘と夫をゴルゴに殺されており、復讐をするつもりだった。ジミーはゴルゴに3人の暗殺者がいることを伝えた。
ゴルゴは待合室にいるどの人間が暗殺者か見張っていた。そして搭乗手続き開始と共に3人の暗殺者がゴルゴに銃を放った。次から次へと射殺する。しかしそれでは終わらず、想いも知らない人間がゴルゴを狙撃した。一瞬躊躇したため、よけきれず肩を負傷するゴルゴ。実は人形を持ったヌオールズの孫娘、少女だった。
(解説)
「チェック・メイト」の一幕である。第一の台詞はゴルゴで、罠を仕掛けられたらそこから逃げるのではなく、まずはジタバタせず様子を見ようという考えだ。第二の台詞は逃げないゴルゴを見て、ヌオールズが勝負師としてゴルゴを称賛したもの、そして第三の台詞は情報屋ジミーを捕まえてゴルゴを表したヌオールズの台詞だ。
経営者としての心得を見るようだ。まずは何かトラブルがあったら、慌てて行動するとかえって深みにはまるもの、深呼吸でもして落ち着いてから行動すべきである。次に、事業家であるならば、焦るのではなく、リスクの先に利益があったら、リスクを怖がらずにつかみに行くべきだと説く。そして、色々な情報を鵜呑みにせず、参考にして、自分の意思決定にいかに生かすかを考えろというところであろうか。
しかし、最後の孫娘の命まで犠牲にしてゴルゴを殺しに行く執念たるや、ゴルゴの作品の中でも衝撃度とむなしさがこみあげてくるのは最高級である。ひょっとしてゴルゴが一番殺される可能性が高かったのが、この少女の放った一撃だったかもしれない。
[教訓]
〇トラブルがあったら慌てるな、深呼吸をしろ。
〇リスクを怖がるな、あえてその先の利益を掴みに行け。
〇情報は鵜呑みにするな。