「今日も預かり資産が減少しています・・・資産を増やそうとする顧客の金はヘッジファンドに逃げるし、秘密を守ろうとする顧客も、マネーロンダリング規制の強化で、わが銀行を安全な隠れ家とは思わなくなってしまいました・・・このままでは先細りです。資産運用を積極的にして収益を上げていくか、多少危険な資金を目をつぶって受け入れていくか・・・」
「投機に手を出してはいかんっ!!安全、堅実が顧客の信用を勝ち得てきた歴史を、お前は忘れたのかっ!?」
(ストーリー)
名門ランベルト銀行の副頭取が麻薬中毒で自動車の運転中人をひき殺した。ロシアン・マフィアがそれを見ていて、我々に任せなさいと言って、死体をどこかに運んで行った。
ロシアン・マフィアの元KGBのグラチョフ大佐は、有能なファンドマネージャーであるスミルノフをスカウトした。また、グラチョフはランベルト銀行の副頭取と面会し、お金を預かってほしいと依頼した。
このランドルフ銀行にはマネーロンダリングの匂いがすると、スイス連邦警察庁のマイヤー刑事が調査に入った。
副頭取はブラックマネーの運用資金や、自行の信用を使った顧客獲得が許しがたく、グラチョフ相手に覚悟を決めていると話した。そして、副頭取はヘロインの大量投与によるショック死をしていた。マイヤー刑事が死体を調べるとコインロッカーのカギがあり、それから、グラチョフの仕業であると分かった。マイヤーは頭取の元を訪れ、ランドルフ銀行の大口預金者であるゴルゴのことを尋ねた。頭取は守秘義務で話さなかった。
マイヤー刑事はグラチョフを逮捕した。その時にゴルゴがグラチョフを射殺した。スミルノフのファンドは世界のマーケットを思いのままに操っていたが、彼もゴルゴに射殺され、マーケットは平穏を取り戻した。
(解説)
「砂上の帝国」の一幕である。副頭取である息子が、頭取である父親にやり方を変えようと話をしていたときの会話である。
時代に応じて、変えなければならないこと、変えてはならないことがある。堅実がいいとか悪いとかではなく、お客の信用があってこその会社なのだ。だからお客の信用を無くすようなことがあってはならない。副頭取のやり方は、顧客そのものを変える考え方だ。そもそもスイスは犯罪者のお金でも黙って預金させていたため、多くの犯罪性のお金が集まってきた歴史もある。以前から、そのようなお金を預かっていたのであれば、問題はない。お客の質が変わらず、お客のニーズが変わっただけだからだ。しかし、お客が元々安全、健全思考だった場合には、お客の質の問題で、質を変える、つまりお客そのものの属性を変えてはならない。今まである顧客層に支持されていたのであれば、仮に業績が悪化したとき、その顧客層が自分たちに何を求めて支持してくれていたかを改めて問い直した方がいい。客層を変えることはやってはならない。業績の悪化だけでは済まなくなる。
[教訓]
〇顧客層は変えてはならない。但し、時代に応じてその顧客層が求めるニーズの変化を読み取り、キャッチアップしていくのが望ましい。