「穀物生産高は順調で、収穫率は確実な上昇が見込まれます。畜産も安定的で収益率は、80%はいきそうです。同志ゴルバチョフ書記!今年度の課題は農産物の供給物を増やすことで・・・労働力の追加なしに目標を達成し・・・」
「スローガンは結構だ!君は、今、私に説明したことを・・・君自身が本気で信じているのか!?」
「もちろんです!同志書記!わが国営農場においては、常に過去の平均水準を上回ってきました!」
「事実なら喜ばしいことだが・・・どうしたらそれが可能になるのかね?」
「国営農場の労働者、職員が英雄的な献身をしたことと・・・それから・・・」
「ご苦労だった!」
(ストーリー)
ザイールでゴルゴが仕事を終えた後、ピックアップするはずの飛行機が上層部の命令で、ゴルゴをピックアップせずに去っていった。ゴルゴは別の方法で移動するしかなかった。これを仕組んだのはCIAの作戦部長であった。
その頃、ソ連ではチェルネンコが床に臥せ、次の書記長の件で政争があった。チェルネンコが亡きあとは、追放される恐れがあると考える者がいて、ゴルバチョフの暗殺計画を立て、ゴルゴに依頼した。結果、ゴルゴは断っていたと思われる。
さて、その頃CIAはソ連内の穀物情報を得るために、国営農場にビデオカメラを設置することを考えた。そこで、CIAに協力しているソ連のモスクワ警察の助力を得て、農場の水圧塔にカメラを設置。するとそこにはM-16を持っていると思われる人影があった。これはゴルゴであると判断。しかも標的はゴルバチョフである。
ゴルバチョフの暗殺を仕掛けた者は国家反逆罪で逮捕された。そして水圧塔の人影はゴルゴではなかった。CIAはモスクワにゴルゴが来ているという情報を得ていたが、一体何のために。ゴルゴは自らをはめたCIAの作戦部長を狙撃した。
(解説)
「ソフホーズ」の一幕である。歴史上の人物を殺害する、しかも暗殺されていない人物ゴルバチョフ。読者はゴルゴに狙われたら死ぬはずなのにどうなるんだと興味がそそられるが、結局はゴルゴが狙っていないかったことに安堵することになる。しかもゴルバチョフは我々西側にとってみれば、ペレストロイカを行った指導者であって、親しみを持っている人が少なくないのではないか。プーチンのような「人類のハエ」と比較してしまうとなおさらそう思う。よく「ハエを一匹も逃さぬように」といっているが、クレムリンにハエが飛んでるじゃねえかと、ツッコミを入れたくなる。
さて、ゴルバチョフの元に部下から報告があるのだが、それをゴルバチョフはスローガンと言い切る。これがソ連だからと笑い話にはならない。日本の組織でもよく見かける風景である。「いいことづくめの無責任極まる代物」でしかない。
さらに、どのように実現できるかを尋ねると、「気合、努力、根性」になってしまう。従業員は頑張りますの一言で終わりなのだが、もちろんそれで済むわけではない。どのように具体的にその数字が実現できるかを説明しなければならない。
それが従業員だけではなく、投資家を募る起業家もそうなんだから、全くどうにもならない。スローガンはどうでもいい。何を具体的にどうするかをきちんと説明せよ。従業員にもそれを課せ。経営者もそれを守れ。
[教訓]
〇経営にスローガンは不要。具体的にどうするかをきちんと説明して、実行すること以外には何に意味もない。