「ビル・・・俺の耳に入っているんだぜ・・・お前さんがモルヒネをやってるってことは・・・わかるかいビル・・・今度の仕事はジャンキーにやらせるわけにゃあいかなかったんだ!・・・」
「俺は昨夜ジョニィ・オーガスタを消した男と同程度に期待しているんだが・・・」
「なあビリィ・・・俺はお前さんの腕を信じているせ、昔から、ずっとな!だが、モルヒネまでは許せてもヒステリー女は我慢がならねえ!!・・・プロとして仕事を取るか、ねずみになって愛人を取るか・・・それはお前さんの判断に任そう・・・」
(ストーリー)
ゴルゴがニューヨーク芸能界のボスであるジョニィ・オーガスタと、その場にいた女性歌手を射殺した。次の日にニュースになり、殺し屋ビル・マクダネルが、誰からの差し金なのか知り、ゴルゴにそのボスの殺害を依頼したチャールズ・ルカの元を訪れた。ビルの妻アイリーンは、仕事をもらいにチャールズのところに行くことに気づき、チャールズに二度と会わず、この業界から足を洗うことを望んだ。
ビルは、オーガスタを殺す役目は自分であったという。しかしルカは今度の仕事は、確かな奴に「きれいな仕事」をしてもらいたかったと話す。ビルは同じくらいのことはできるとルカに言う。
そこでチャールズはビルにビルの妻であるアイリーンの殺害を依頼した。アイリーンが生きていると、チャールズの悪事がバレる恐れがあると。そこでビルは依頼通りに仕事人として妻を撃ち、ゴルゴを追いかけてシカゴへと向かうのであった。
(解説)
「アーリィ・オータム(前編)」の一幕である。ビルはゴルゴと比較して、自分が劣ると思われたのが暗殺者としてのプライドを傷つけられた。しかし、愛人を殺せとはなんともである。それを断らせず、イエスという言葉を引き出すために、チャールズは卓越した交渉術を披露した。
ゴルゴには負けない。ゴルゴと同じようにきれいな仕事はできたと主張するビル。そこでモルヒネをやっている、ジャンキーにはやらせられなかった。でも、昔から信頼している。ゴルゴと同じくらいに。モルヒネはいいが、ヒステリーは許せん、そしてプロかネズミ、どっちなんだ、とここまで言われたら、引き下がれないだろう。プロとしての闘争心にいかに火をつけるかという話術なのである。
[教訓]
〇やる気を出させるためには、闘争心に火を付けろ。
〇相手にノーと言えない状況まで追い込んでから、イエスという言葉を引き出せ。