「F25の人工知能はインプットされた地形データを基に作動していました。ところがゴルゴ13がミサイルで地形を変えたため、人工知能が混乱を起こしたのです。つまり人工知能の中には存在しない空間“偽空座標X”を作り出したのです・・・」
「そのために、ミサイルは追尾できず・・・」
「そういうことです。人工知能は、ゴルゴ13機が存在しないはずの偽空間に入ったので判断を停止したのです。論理では導き出せない、直感でのみなしうる業です。人工知能が時として混乱する唯一の弱点です。」
(ストーリー)
ゴルゴがCIAから仕事の依頼を受け、アメリカの戦闘機に乗っていたところ、敵視され、攻撃を受けた。これはアメリカ空軍の仕掛けた罠ではないかと、基地に戻ってきた。
ゴルゴはアメリカ軍の中で、依頼人であるCIAとは異なる目的で動いたものがいるということだと伝え、調査を依頼した。
DARPA(国防高等研究計画局、但し劇中ではARPA)に人工知能開発チームがおり、ラズベリー注意が中心となって、アメリカの次期戦闘機F25の人工知能攻撃システムを開発していた。彼らはゴルゴの飛行データを記録して、人工知能に組み込むことを考えていた。
クリントン大統領の下に、それらチームが暴走し始めたという情報が入ってきた。ゴルゴ13を敵に回すわけにはいかないと、クリントンは調査させた。
研究チームの中でゴルゴを敵に回したくないと考えていたラドは仲間を裏切り、データをゴルゴに渡す。それが仲間に知られることになり、ラドは射殺される。チームはゴルゴのデータ解析とF25へのデータ搭載を急いだ。
ゴルゴはアメリカ空軍よりF15の貸与を受けた。F25の訓練飛行において、脅威の戦績を上げ、改めてゴルゴの人工知能のすさまじさをチームは知ることになる。そこにゴルゴの期待が現れ、ラズベリー中尉のF25、つまりゴルゴの人工知能を搭載している戦闘機と生身のゴルゴが対戦する。性能が劣るF15ではあるが、人工知能は地形の変化によって混乱を起こした。そのため、
(解説)
「偽空座標X」の一幕である。ゴルゴが性能の劣るF15で、人工知能搭載の高性能機F25を撃墜したことについて、アメリカのトップがクリントンを囲んで議論していた。
人工知能の弱点とは言うが、見たことのないことが生じると、思考停止してしまう人間も少なくない。むしろ教科書の暗記が得意であった人の方が、そのような傾向に陥りがちである。教科書にはすべて答えが書いてあると思いこみ、答えがないと、解答ができないということになってしまう。どうしても唯一の答えを求めているようだが、実は答えは社会科学上は無数に存在する。どちらが正しいとは言い切れないことが多い。それを正しいのは自分たち、間違っているのはお前ら、と考えるから、世の中に争いごとは尽きない。
過去に解答がない場合には、過去の事象から、未来を推論するしかない。そしてそれができるのが人間だ。答えがありません、できません、無理、というのは人工知能に任せておけばいい。少なくとも人間の言葉ではない。
[教訓]
〇過去に答えがなくても、過去の事象から答えを作るのが人間である。
〇自然科学はさておき、社会科学においては答えを探すのではない。答えを作るのだ。