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蓋然性でモノを語れ

「この州の豪族の娘で、インド核エネルギー開発の統括者でもあるあんたが・・・そんな観光ガイドのために俺を呼んだのか?」
「失礼したわ、Mr.デューク・トウゴウ・・・でも、仕事を依頼されたとき、あなたは全ての背景を知っておこうとする・・・そうでしたわね・・・?」

「らしい?漠然とした可能性か?」
「いいえ、可能性ではなく蓋然性だわ。我が国のスパイ網がもたらした信用度の高い情報なの!」

(ストーリー)
インド海軍は当時のソ連から原潜を購入する交渉が進んでいたが、ソ連崩壊によって交渉が止まっていたときに、中国が参入してきた。結局売値を釣り上げただけで、インドが購入することになったが、中国がこの原潜の破壊を画策しているらしい。

通常潜水艦は出港後一度も浮上しないはずで誰がどのようにアクセスするのか、そして破壊すれば沈没して全員が水死するとゴルゴは疑問に思ったが、途中で放射能測定をしているロシア科学アカデミーの観測隊が遭難しかかっており、その救助を行うことになっているという。

科学アカデミーのメンバーを収容し、再び就航を開始。その後で有機溶剤が空調システムに混入された。しかも医務室で海曹が射殺体になっているのを発見。どうやらダクトから有機溶剤が吸い込まれるように薬品に細工してあったという。また、技術長も機関長も殺されている。その後、アカデミーから救い出した女技術者はアクチュエータ用分電機と油圧タンクを破壊。炉心温度が1,000度を超え昇温。後部区画を遮断し、緊急事態に備える。但しその後部区画には女科学者とゴルゴが取り残されていた。

女科学者は放射能で汚染され、海軍の潜水艦が許せないという。もはや命も短く惜しくもない。しかしこの実験艦は、周囲の海水を汚染してでも炉の暴走を防ぐ非常冷却装置を備えているため、メルトダウンは起きないとゴルゴはいう。女は機関室に館内火災を起こそうとし、その場から立ち去る。そのとき潜水艦は氷山にぶつかり、大きく揺れ、女は頭を打って即死する。ゴルゴは艦長に女が死んだ、浮上しても問題はないと連絡した。中国から買収されていたのは、女ではなく、原潜の副長であった。

(解説)
「北緯九十度のハッティ」の一幕である。前段は、原潜を守ってほしいという依頼人が、インドの文化について説明したことによる、依頼人とゴルゴの会話である。ゴルゴは依頼される前に、依頼人からなんも伝えられなくとも、背景まですべて調査しているのだと思う。我々の一般人レベルでは、そこまでは中々難しい。背景を知っているのと知らないのとでは、成功確率に違いが生じる。背景を知っていれば、事前にリスクを把握できることも多いし、途中で失敗しても、その原因を把握しやすい。そのためすぐに目標に向けた軌道修正も可能となる。お客が背景を話し話したら、聞いておいた方がいい。ただ、自慢話とか、雑談は聞いておく必要はない。

後段は依頼者とゴルゴの話の続きだが、原潜に中国の工作員が入り込むという情報を掴んだ。「~らしい」と依頼者が言うものだから、その情報の確度についてゴルゴが訪ねたわけだ。この辺は日本語の問題ではあるが、可能性とは確率で表すことができる。そして蓋然性とは偶然と必然の中間ではあるが、「ある」か「ない」かを示す。ビジネスにおいては、可能性で話すことが多いが、可能性なんてのはないかもしれないということを意味する。だから、仕事を持ってきた人が蓋然性で話しているかを確認すべきだ。でも成功報酬野郎(上手く行ったら払うと言ってくる奴)は、可能性でしか話をしてこない。そういう奴からは具体的なソリューションも出てこない。

[教訓]
〇ビジネスでは、なるべく背景も含めたあらゆる情報を入手せよ。
〇可能性ではない、蓋然性で語れ。「ある」ということしか信用するな。大抵「ない」。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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