「党は、農民だけのものでも、工場経営者だけのものでもない。あらゆる利害のバランスの上に成り立つのが政治だ!」
「性急な開発援助が何ももたらさないことは、君が一番よく知っているはずだ・・・現地にあるモノを使い、現地の人が直せるモノを作る・・・」
「パプア・ニューギニア政府が、ラム総合開発計画の中止を申し出たそうだ。」
「じゃあ、東亜ベアリングからの3億円は!?・・・」
「うろたえるな!!支援者の前だぞ!!」
「どうフォローするんですか、阿倍さん?ニューギニアの件は?」
「ちょっと風向きが変わっただけさ・・・それよりマカオ中華興銀ビルへの情報システム、あれへの納入は・・・?」
(ストーリー)
秋田県から選出された国会議員相川政義は、アメリカからのコメの自由化に反対を有権者に伝えていた。また、父親が誘致した東亜ベアリングの工場への受注が落ちており、こちらへの対応にも迫られていた。そして相川の元に、パプア・ニューギニアにODA(政府開発援助)絡みの開発計画が舞い込んできた。
日本の商社である富士通商の阿部秀行は、パプア・ニューギニアで活動している藤岡俊樹に会い、協力を呼び掛ける。藤岡は元々国際協力事業団(JICA)の職員であったが、ODAのやり方が気に入らず、妨害する側に回っていた。しかし、地元民の娘の身売りを見て、このままではいけないと、阿部のプロジェクトを応援することにした。
相川はパプア・ニューギニアで旧友の藤岡と再会する。そこで、現地の人のためになる援助を実現させたいという藤岡の気持ちに、相川は東亜ベアリングの救済策も見えてきたと感じていた。
さて、アメリカの全米精米業界協会は、日本の行っているニューギニアの開発が、アメリカからの日本へのコメの輸入を妨げるとして、ゴルゴに対して、パプア・ニューギニアの開発大臣オットー・ベルガーの始末と、パプア・ニューギニアで開発話が起こらないように依頼した。ゴルゴは地元のニオコマドの呪いを利用して、ベルガーを殺害した。
(解説)
「日・米コメ戦争 虎の尾を踏んだ男たち」の一幕である。まず一段落目は、民自党の幹事長に相川が呼ばれて、説教されていたときの台詞。これは会社経営にも通じる。会社は株主だけのものでも、従業員だけのものでも、経営陣だけのものでもない。利害のバランスの上に成り立っているのが会社なのだ。
二段落目は、藤岡がパプア・ニューギニアで世話になっていた日本人・浜林の台詞。藤岡が3か月たっても井戸の水が出ないことに疑問を持ち、それに対する返答であった。開発援助についてだけでなく、会社の改革を急進的に行うとする経営陣に対しての、一般従業員とのせめぎ合いも似たところがある。性急な改革に対して、従業員はついてこないが、経営を預かっている経営者は性急な改革をしたがる。総論は経営者目線で、各論は従業員目線での改善がスムーズな解決方法となるであろう。
三段落目は、ゴルゴがベルガー開発大臣を殺害した後で、政府が計画中止を決めたということが、代議士相川の元に届いた。もらった政治献金がと思ったが、幹事長が支援者の前でうろたえるなと言った。プロジェクトのとん挫。入ってくるはずの入金がない。社内のものに裏切られた。詐欺師に騙された。経営にはトラブルがつきものだ。いかなる場合でも、経営者は人前でうろたえてはならない。従業員は不安を感じ取る。そうすると顧客の方まで伝播してしまう。ひいては業績のさらなる悪化につながってしまう。
四段落目は、パプア・ニューギニアの開発話がダメになった後で、日本の帰国途に就いた商社マン阿部と、社内の者との会話だ。「だめか、ハイ次々」というくらいに物理的にも精神的にも変わり身が早いくらいがちょうどいい。サラリーマンだから無責任になれるということもないわけではないが・・・。
[教訓]
〇会社経営は関係者のバランスの下に成り立っている。どこかにメリットを寄せると上手くいかなくなる。
〇企業改革は、総論は経営者目線だが、各論は従業員目線に立たないと失敗する。
〇経営者はどんなときにもうろたえるな。それが従業員から顧客にまで伝播し、経営をさらに悪化させる。
〇ダメなときは拘らず、すぐ次に進め。