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時にはハッタリも必要

「船を破られたその償いにゃ。金を取らずに国を取る。国を取って蜜柑を食う。」

(解説)
龍馬の乗っていた蒸気船「いろは丸」が紀州藩の軍艦明光丸が衝突し、いろは丸が沈没した事件が起きた。その時に龍馬が紀州藩を批判するため、民衆を煽ったときの俗謡である。

龍馬は当時日本に持ち込まれた万国公法を持ち出して紀州藩の過失を追求した。いろは丸の総選は当時の国際ルールに照らしても重大な過失があったが、国際ルールに精通していない紀州藩は龍馬の巧みな交渉術に翻弄された。土佐藩から龍馬以外で、三菱の創設者岩崎弥太郎まで出席して交渉に臨んだというから、勝てるわけもない。結局は紀州藩の茂田一次郎が土佐藩参政の後藤象二郎と交渉を行い、紀州藩が折れて、鉄砲も含む積み荷に相当する賠償金(8万3526両198文)を支払うことで決着したが、この賠償金額は今の164億円に相当するものだったという。これがために茂田一次郎は、免職となったそうだ。

沈没したいろは丸の船体は1980年代に海底で発見されたが、潜水調査では積み荷代金の大部分を占めた重火器は全くは確認されておらず、紀州藩から多額の賠償金をせしめるためのハッタリであったと言われている。なお、賠償金は7万両に減額されたうえで土佐藩に支払われたが、その最終的な受取人になるべき龍馬は、支払いの8日後に暗殺されてしまった。この事故は海難審判事故として日本で最初の事例とされている。

龍馬の策士ぶりがわかるストーリーである。ポイントは以下の4つ。
(a) 相手の苦手なこと、自分の得意な土俵で勝負しろ。
(b) いち早く情報を収集せよ。
(c) ハッタリをかませ。
(d) 世論を味方に付けよ。

これは現代の交渉でも使えるスキルである。

[教訓]
〇自分の得意なのところで勝負せよ。
〇ハッタリをかませ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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