肝腎のヴァンフリート4=2において、戦況はどのように展開しているのか、その点に思い至った帝国軍総司令官ミュッケンベルガー元帥は、グリンメルスハウゼン中将に対して、詳しい状況報告を求め、同時に余力あるときは離陸して、密集した敵軍の後背を衝くように指示した。
ミュッケンベルガー元帥は、この無能な年長者をいささかも評価してはいなかったが、戦況がこのようになれば、一個艦隊という巨大戦力を、空しく遊ばせておくわけにはいかない。実のところ、このような指示をことさらに出さねばならないということが、ミュッケンベルガー元帥にとっては、すでに十分に腹立たしいことなのである。グリンメルスハウゼン中将が老練かつ有能な指揮官であれば、好機を見て進んで戦いに参加し、何よりも自分自身のために武勲を立てるであろう。
「地上戦等中止して、さっさと宇宙空間に出てくるがいい。何のための艦隊だ!」
自分が待機を命じたことは覚えていても、そう言いたくなるのである。
(解説)
指示しないと動かないという人間は少なくない。困ったことに、指示しないと、指示を受けるまで待っているという奴もいる。いったいどこから指示をしたらいいんだ。1を指示しても、10まで指示しないと、1までしかやらない奴もいる。何だか自分でやった方が早い。ここまでくると、その部下の存在意義とは何だろうと考えてしまう。おそらく、将来的にはAIに代替されてしまう第一号のような存在である。
管理職までなったやつは、まさかここまでひどい奴はいないだろうとは思うものの、確信はない。だいたい、創業した奴、つまり世間でいうところの経営者だが、そんな奴にあふれている。これが廃業率の正体であろうが、指示待ちだったら、サラリーマンをやっていた方がいい。でも、そういうサラリーマンは今後生きにくくなることは確かである。
上記からすると、有能なリーダーの条件とは、チャンスを見て進んでマーケットに参入し、会社や自分のために、お金を稼げるということになる。スタッフを遊ばせておくこともしない。状況の変化を知り、以前とは異なる意思決定をしなければならないことに、最低でも気づかないといけない。上記例からすると、以前の意思決定は、ミュッケンベルガーによる待機、状況が変化すれば、それ以外の意思決定を求められる。この点、経営者でも依然と状況が変わっているのに、バカの一つ憶えで同じことを繰り返している奴もいる。こういう奴も間違いなく廃業率に貢献している。
(教訓)
〇廃業率に貢献している経営者は、チャンスを見て進んで市場に参入しない。そして、状況の変化に伴い、以前の意思決定を変化させようともしない。