「考えても見れば、元々兵士の忠誠心なんてものは、いわば精神的な麻薬ですからな。それが効いている間は、陶酔の温かい海にたゆたっていられる。いったん効力を失えば、ボロボロになった自分を見出すだけだ」
(解説)
忠誠とは、自らが所属する国家や団体、それらの権力者、または思想に対して、尊敬の念を持った献身と服従の態度を示すことである。英語では3つに分類される。
(a) Fidelity:約束・主義に従う
(b) Loyalty:個人の心、感情からくる献身
(c) Allegiance:国や組織への義務的な忠誠
ビジネスにおける忠誠は、本来、Loyaltyであるべきだ。雇用契約を締結しているのだから、組織に義務的な忠誠を尽くせというのはナンセンスだろう。それだけ、その会社や経営者に一ミリも魅力がないということを意味することになる。
終身雇用の形が崩れ、数十年前と忠誠心の中身は大きく変化したものと思われる。しかしだからと言って、忠誠心がなくなったわけではない。経営者が魅力的であれば、忠誠心はいくらでも喚起し得る。終身雇用の制度が忠誠心の基盤となっていたわけではない。どのように忠誠心を呼び起こしたらよいのだろう。
(1) 改善に向けて部下を定期的に激励する。
(2) 部下を信頼する。
(3) 部下の本心を理解する。
(4) 部下と価値を共有する。
(5) 部下と同じ目線で仕事をする。
(6) 部下の動機付けを行う。
結局のところ、経営者と部下が同じベクトルに立てているかということなのだ。従業員をこき使って、自分がいい思いをしている。そんなふうに従業員に思われていたら、忠誠心なんて沸き起こりようがない。上から目線ではなく、同じ目線で、同じ苦労をする。いわゆる同じ釜の飯を食えるかどうかである。
入社したては忠誠心があっても、従業員から、俺たちとは所詮違う世界の人だ、と思われたら、忠誠心という麻薬は効力を失い、二度とは戻らない。
(教訓)
〇忠誠心を熟成するには、経営者と従業員が同じ目線で仕事をしているかである。上から目線は言語道断である。
〇俺たちとは所詮違う世界の人だ、と思われたら、忠誠心は高まることなどない。