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ビジネスにおいて、親しくすべき人材とは

故に三軍の事、間より親しきは莫く、賞は間より厚きは莫く、事は間より密なるは莫し。

 

(現代語訳)

全軍の兵士の中で、将軍と最も親密な関係にあり、将軍と直接対面して下命を受けるのは間諜である。また、全軍の中で最も手厚い恩賞を受けるのも間諜である。そして最も機密を要する仕事に従事するのも間諜である。

 

(解説)

将軍は、スパイに対しては他のどの部下よりも価値を認め、最高の報酬をもってもてなすべきだと説いている。さらに、「事は間より密なるは莫し」として、諜報活動は絶対に秘密にしなければならない事柄だ。

 

スパイとは国家の最高機密を握る存在である。敵国を討つだけでなく、敵国と第三国を争わせ、敵国の国力を削ぐ役目を担うこともある。さすがにスパイの口は堅いだろうし、拷問を受けても喋らない意志の強さが求められる。スパイがピーチクパーチクと口が軽いようだと、戦術もままならない。逆に国家の存立を危ぶむ存在になる。

 

そのため君主とスパイの間には常に親密な関係を保っておく必要があるのだ。お互いの深い信頼関係がなければ、スパイからの情報を得られないし、またスパイからの情報の真偽も確認できない。まさに機密の裏返しに親密ありといったところか。

 

スパイの中で「反間」という存在がいる。これは敵国のスパイでもあり、自国のスパイでもある存在だ。どちらの国に対しても自由に往来を赦され、しかも自国と敵国のどちらにも中枢に通じている。ある意味一番信用ならない奴なのだが、反間とハサミはまさに使いようなのだ。だからこそ、孫子は反間を最大の報酬をもって扱えと言っている。敵国に転ぶ危険性は高いが、自国に転ぶ利点も大きい。まさにハイリスク・ハイリターンの存在と言える。

 

一般的なビジネスにおいては、反間のような存在は難しいと思うが、ある会社の中枢にいる人間が、競合他社の中枢にいる人間と親しくしていた。元々、官僚時代の同僚だったらしい。早めに退官してお互いに民間に下り、情報交換をしていた。あちらの元官僚がものすごい強大な企業に対して、こちらの元官僚が中小企業の中枢だったし、技術的な情報交換ではなく、経営戦略上の情報交換であった。あちらの元官僚からすれば、会社の同僚の蚊が飛んできて、他人の腕だし、血くらい吸わせてやるか、くらいの感覚なのかもしれない。確かにあまりにも売上規模が違いすぎて、少しぐらい情報を流したからと言って、市場ポジショニングが変わると思えない。でも後何十年もたったら、そんなこと言っていられなくなるかもしれない。

 

[教訓]

〇貴重な情報をもたらす人を尊重せよ。

〇貴重な情報をもたらす人とは、常日頃から親しくしろ。

 

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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