卒を視ること嬰児の如し、故に之と深谿に赴くべし。卒を視ること愛子の如し、故に之れと倶に死すべし。
(現代語訳)
指揮官は、まるで乳飲み子を見るかのように兵士をいとおしみ、まるでかわいい我が子を見るかのように大切にすべきだ。このような信頼関係が築かれて始めて、将軍はその兵士を連れて激戦地に赴き、生死を共にすることができる。
(解説)
我が子のように大切にした兵士が死に行くのは辛いだろうが、家族並みの信頼関係が将軍と兵士の間には必要であると説いている。
最近の日本のビジネス環境は段々ドライになっている。会社によりけりだろうが、会社が大きくなればなるほど、個人同士の人間関係は希薄化していないだろうか。社長と従業員の関係を見ても、現実的に距離が遠くなっている。例えて言えば、サッカー専用でないスタジアムと、サッカー専用スタジアムでも、後者は選手との距離が近い。近ければより親近感がわくものだ。J1の選手だと近寄りがたいが、J3の選手だと肩も組める。近い方が、より感情移入もしてしまう。いわゆる家族という感覚を持つことができる。
この点中小企業はすぐそこに社長がいる。身近にいるから親近感を持てるし、向こうからも親近感を持ってもらえる。以前、ある中小企業の社長の引っ越しを手伝ったことがあるが、こういう人間関係には尊いものを感じる(その時はその会社の従業員であった)。大企業の社長だと恐れ多い感じがして、こちらがしり込みしてしまう。むしろその壁を作っているのは、従業員側なのかもしれない。また上場企業もピンからキリまであり、社長によっては社長室に籠っていないで、社内をうろうろしている人もいる。恐らく当人、従業員を監視しているという意図はない。但し、観察くらいはしているのかもしれない。
流石に社長と友達という感覚にはなれないが、社長に親近感を持てるということは、会社自体に親近感が持てることと同じくらいの意味を持つ。そもそも会社自体は無機質な存在だから、会社そのものに親近感を持てるわけではない。それは部下、上司、同僚等の共に働いている人たちとどれだけ親近感が感じられるかによる。
きっとこの感覚こそがこれからの企業には必要なのだろう。特に社長が身近に感じられる会社の組織力は強固だ。もちろん身近すぎると相手の粗も見えてきてはしまうが、望ましいのは家族のような組織なのだろう。大企業では出世競争でギスギスしてしまって難しいかもしれない。
[教訓]
〇リーダーとしては部下との心理的距離を縮め、親近感を持ってもらえるように努力せよ。
〇リーダーが身近に感じられる会社の組織力は強固だ。
〇これからの会社経営に望ましいのは家族のような組織体だ。