「家康は愚か者だ。が、油断のならない愚か者だ。」
(解説)
豊臣秀吉が、徳川家康の城に滞留したいとの申し出をした。これを聞いた側近たちが、「秀吉公に、充分におもてなしをするべきでしょう」と勧めた。しかし家康はそれをせず、城を出た。側近たちは、家康に「そんなことをしていると、秀吉公に愚か者と、思われますぞ」といったが、家康は「秀吉は、油断のならない人だ。利口ぶってなまじっかの饗応をすれば、すぐに警戒をする。それよりも愚か者を装って何もしないことの方が、身の安全になる」と
側近たちに返答した。その結果秀吉が自分の側近に語ったのが、上の言葉である。当然、秀吉も家康の腹は見抜いていた。まさに策士同士の腹の探り合いである。
リーダー同士の腹の探り合いでも、以上のような油断のならない愚か者どもの駆け引きが見られることがある。リーダーも自分の腹積もりを探られてはならないが、逆に相手の腹積もりを探るぐらいの狡猾さは持たねばならない。
こちらは知らぬふりをして、相手がいい気になって墓穴を掘るのを待つ。交渉術の基本だ。
[教訓]
〇リーダーは愚か者のふりでもして、相手を油断させよ。