それ将たるの道は、軍井汲まずして、将、渇を言わず。軍食熟えずして、将、饑を言わず。軍火燃えずして、将、寒を言わず。軍幕施さずして、将、困を言わず。夏にも扇を操らず、雨にも蓋を張らず、衆と同じくす。
(現代語訳)
将軍の心得は次の通りである。
(a) 水を汲んでこないうちから「喉が渇いた」等と言ってはいけない。
(b) 食事の支度ができていないうちから、「腹がへった」等と言ってはいけない。
(c) かがり火をともさないうちから「寒い」等と言ってはいけない。
(d) 幔幕を張り巡らさないうちから、「疲れた」等と言ってはいけない。
(e) 夏でも扇を使わず、雨の日でも蓋いをかけず、全て兵士と共にすべきである。
(解説)
水がないのだから喉が渇くのは当たり前、食事の支度ができていないのだから腹が減るのは当たり前だ。中には嫌味たらしい上司とはいるものだ。して欲しいことは、きちんと命令するなりしろ。ただ部下だって疲れているのだから、せかせなくてよい。ひたすら待つのだ。部下は自分の仕事はやるものだ。忘れていなければ。
そんなに水が飲みたければ、部下の代わりに自分で井戸に水くみに行くぐらいしたらいい。そうすれば、部下の方がすみません、と申し訳なさそうに急いで仕事をするようになる。実ば部下をせかせるのは、自分が仕事をしてしまえばいい。これは本当にどうにもならないときの手段である。当然、部下に任せた仕事を自分が取ってしまうことは一番やってはいけないことだからだ。ただ、取り上げないのだったら良い。本当に部下が忙しければサポートしてあげても良いと思う。
社長だからといって、特に威張る必要もないが、これ見よがしに良い生活を見せびらかすのはどうかと思う。役員だからたくさん報酬をもらって当たり前ともいえない。そもそもその企業の売上を上げてくるのは営業等部下がやっていることだ。それに会社が未来永劫安泰とは限らない。キャッシュが不足するときだってある。そのときのために役員報酬は取っておくべきである。役員報酬とは実は報酬ではなく、会社からの預かり金なのだ。そういう意識がない奴が、会社がこけたときに、給料未払を堂々とやるのだ。
生活水準まで一般従業員に合わせるべきとは言わないが、あまり華美な生活をすべきではない。贅沢はほどほどに。隠れてしなさい。
[教訓]
〇リーダーは部下を優先に考えろ。まずは部下、そして自分だ。
〇役員報酬は報酬にあらず、会社からの預かり金である。