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交渉上手は損をする?交渉下手は得をする?

それ兵起こりて静かなるは、その険を恃むなり。迫りて戦いを挑むは、人の勧を欲するなり。衆樹動くは、車来たるなり。塵土卑くして浩紀は、十来たるなり。辞彊くして進駆するは、退くなり。半ば進み半退くは、誘うなり、杖して行は、饑うるなり。利を見ても進まざるは、労るるなり。鳥集するは、虚なり。夜呼ばわるは、恐るるなり。軍擾るるは、将重からざるなり、旌旗動くは、乱るるなり。吏怒るは、倦むなり。数賞するは、窘るなり。数罰するは、困しむなり。来たりて委謝するは、休息を欲するなり。幣重くして言甘きは、誘うなり。

(現代語訳)
(a) 両軍が対峙したとき、敵が鳴りを潜めているのは、堅固な守りを頼みとしているからである。
(b) しきりに戦いを挑発してくるのは、こちらの侵攻を誘おうとしているのである。
(c) 風もないのに樹々が揺れ動いているのは、兵軍が侵攻して来るのである。
(d) 土埃が低く広く上がっているのは、徒士が攻め寄せてくるのである。
(e) 使者に強気の口上を述べさせ、強行突破の構えを見せるのは、退却に転じている印である。
(f) 進行するでもなく、後退するでもない構えをとっているのは、誘いの隙を見せているのである。
(g) 杖をついて行軍しているのは、飢餓に悩まされている証拠である。
(h) 明らかに有利な状態にあるのに、あえて進行してこないのは、疲労困憊している印である。
(i) 敵陣に鳥が群れているのは、既に陣を引き払った印である。
(j) 夜、大声で呼び交わしているのは、恐怖感にとらわれている証拠である。
(k) 軍に統制が欠けているのは、将軍に権威がなく、部下から軽んじられている印である。
(l) 旌旗が揺れ動いているのは、混乱に陥っている印である。
(m) 幹部将校が部下に八つ当たりするのは、長期の遠征に疲れているのである。
(n) 賞賜を濫発するのは、窮地に立たされている証拠である。
(o) 刑罰を濫用するのは、どうにもならない状態に追い込まれている証拠である。
(p) 使者をよこして詫びを入れてくるのは、軍に休養を与えようとしているのである。
(q) たくさんの贈り物を持参し、ご機嫌を取り結んでくるのは、味方につけようとしているのである。

(解説)
未上場企業への投資の交渉事の現場では、狐とタヌキの化かし合いが良く起きる。現実的にベンチャー企業の多くはキャッシュハングリーであることが当たり前だから、投資をして欲しい方が積極的になるのが当たり前である。投資の受け手企業はいくつかの投資先にお声掛けもしているから、他の投資先の話もするのが当たり前ではあるのだが、嘘をつかなきゃいいのに、良い条件を出す、この場合には株価を高めに設定して、投資先の出資割合を落とすことになるが、〇月末に投資実行予定なんですよと、強気に出てくる。ならしばらくはキャッシュはいらないですね。うちはじっくり検討しますといいようものなら、まあまあと今のうちであれば、その株価よりも安めにしておきますから、といらんのに交渉をしようとする。起業家も技術やビジネスの事を淡々と説明するぐらいにしておけばよいのだ。妙に交渉事が上手い必要もない。こういう起業家を見ると、事業がやりたいというよりも、カネが欲しいだけなんじゃないかという気がしてくる。大抵そうだが。

起業家は交渉上手ではあってよいのだが、あまりそのそぶりを見せすぎない方がいい。かえって警戒される。交渉下手なふりして交渉上手というのが一番である。

[教訓]
〇起業家は交渉下手に見せておいて交渉上手というのが良い。
〇起業家はカネが欲しいのか、事業がしたいのか。当然後者だろう。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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