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和とは個性を否定するという意味ではない

それ兵を用いるの道は、人の和に在り、人和すれば、勧めずして自ら戦う。もし将吏あい猜み、士卒服さず、忠謀用いられず、軍下謀議し、讒慝こもごも生じなば、湯・武の智ありといえども、勝ちを匹夫に取る能わず、いわんや衆人をや。

(現代語訳)
軍の統率には人の和が重要である。人の和があれば兵士は強制されることなく、自ら進んで戦うようになる。和でないときは次のような場合だ。
(a) 幹部同士が反目しあっている
(b) 兵卒が命令を聞かない
(c) 立派な作戦計画を立てても採用されない
(d) 部下が幹部を非難する
(e) 讒言が横行する。
このような状況では、湯王や武王のような智謀に恵まれていても、たった一人の相手にもてこずるであろう。ましてや大軍を相手にするとなれば、敗戦は火を見るより明らかである。

(解説)
「和を以て貴しとなす」とは、元々は聖徳太子の十七条憲法に記載されていたことで、「一曰。以和爲貴、無忤爲宗。」、つまり「世の中の物事は、すべて調和ということが大切である。決して片方にだけ偏ることなく、常に公平に見て、双方の納得できるバランスを考えなければならない。」と解釈できる。

単に争いを起こしたくても、グッと我慢しろ、というような表面的な調和ではなく、しっかりと議論をして、全ての人がなるべく納得した状態にしなさいということであると思う。ある人の犠牲の下にある人がメリットがあるような関係でいてはならない。組織においては個が犠牲になることはやむを得ないが、その犠牲も致し方ないと思えるぐらいでなければならないのである。言いたいことを言って、カッとするのはご法度。最終的には互いに少しづつ譲り合って調和していこうという組織なのだ。

社会人になると、自分の気持ちを抑えて、とりあえず組織になじむようになるのが普通だ。抑えたものが溜まるとどこかで爆発するか、いずれは退職することになるだろう。争いごとの大半はお互いの言い分が通らないところにある。そもそも人が十人いれば十個の異なる考え方があって当然なのだ。それを一方だけ賛成し、別の意見を無視すると不和が起きる。和をもたらすのは先ずは議論から始めるのだ。

[教訓]
〇和はまず議論をし、お互いがお互いの主張をし、そして妥協点を見つけた先にある。
〇自分の主張を我慢した先に、本当の和はない。
〇真なる和を持った組織こそが、強い組織となる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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