帝舜が禹に「お前も何か言ってみよ」というと、禹はお辞儀をして「私には何も言うことがありません。ただ日々を一生懸命にやろうと思っているだけである。」皋陶が聞きとがめて「何を一生懸命というのです」と問うと、「洪水が天にはびこり、浩々として山を包み丘に登り、人民がみな困窮しました。それで私は陸を行くのに車に乗り車に乗り、水を行くのに舟に乗り、泥を行くのに橇に乗り、山に行くのに檋に乗り、山を巡り木を伐り、益と人民に稲を与え、九川を導いて海に注がせ、溝を掘って川に落としました。また、稷と人民に鳥獣を与え、食物が少なければ、余裕のある所から徴して、足らないところに補い、また住居を映してやりました。それで人民は安定し、万国が収まったのです。」皋陶は「ああ、そうだ。それがそなたの美徳であった」といった。
(解説)
天職の面接の時にも、ついつい「一生懸命やります」「頑張ります」と言ってしまう便利な言葉なんだが、言っている方はいたって真面目ではあるものの、言われた面接官にとってみれば、ご挨拶にしか思っていない。それに一生懸命やってくれなきゃ困る。給料を払うんだからとツッコミどころ満載なのだ。
だから何を一生懸命やるのか、頑張るのかについて、もっと具体的に言ってみよう。前職での課題はノルマの設定が低すぎて、毎月の目標を簡単にクリアできてしまったために、年間を通してみると、自分の期待以上の結果を出し切れませんでした。それでも社内の評価としては、十分に上司の信頼を得られるものでした。
貴社の商材は、前職の商材よりも単価が高く、件数としてはもう少し多くこなせると思います。まずはノルマの設定について、直接の上司の方とよく相談させていただいたのちに、ある程度商材を把握できれば、若干背伸びをしたノルマを自己に設定することで、自分の能力を高めていきたいと思います。・・・ということについて一生懸命やるだの、頑張るだの言えばいいのだと思う。
一体何について一生懸命か頑張るかわからないと、総合して言われても、面接官に対する印象は良くなることはない。上記の例では「食物が少なければ、余裕のある所から徴して、足らないところに補い」とある。まだ面接中の会社での実績を上げぬ前に、「営業実績の足りない従業員がいましたら、私が指導したり、あるいは直接同行することで結果を出させるようにします」と言えるのは、前職で営業部長クラスであった人が、営業部長候補として入社する場合に限る。まあ、面接のうちにそこまで一生懸命や頑張らなくてもよいと思う。
以上はサラリーマン転職の例ではあるが、経営者であれば、金融機関相手に、営業を頑張らせていただきますということはあるかもしれない。その時も具体的にどのように頑張るかを伝えないと意味がないので気を付けること。
[教訓]
〇一生懸命に頑張ると誰かに伝える場合には、具体的にどう頑張るかを相手に伝えよ。