太史公言う。夏の政は忠をたっとんだが、忠の弊は、粗野に流れて礼節の少ないことにある。だから殷人はこの弊にかんがみ敬を尚んだが、敬の弊は、鬼神をたっとび災祥を信ずることにある。だから周人はこの弊にかんがみて文をたっとんだが、文の弊は細末に陥って軽薄なことにある。ゆえに細末軽薄を救うには忠に如くはなく、三王の道は循環のごとく、終わって又始まるのである。周・秦更替の際は、文の弊にあったものと言わねばならないが、秦はこの弊を改めず、かえって刑法を酷にしたのは、道にもとるものであろう。故に漢が興って秦の弊にかんがみ、法を約して忠にかえったのは、民心を倦まざらしめるもので、終始人間の天統を得たものである。
(解説)
どこに重きを置くかによって、メリットやデメリットがある。上記例では「忠」に重点を置くと、礼節が少ないことにデメリットがある。次に「敬」に重点を置くと、間違った法則に基づいて判断基準を持ってしまう。そして「文」に重点を置くと、細かいところに目を向けがちで、肝心なところがダメになってしまう。これらのデメリットを解消するためには、これら三つをバランスよく、保つことが必要になると思われる。
ビジネスの場合、今期は売上増に注力しようと考え、売上増を達成するために営業のインセンティブを高めたら、人件費が増加し、利益率が下がってしまう。あるいは、利益を高めようとコスト意識を持とうとしてケチりだすと、細かいところに神経を使うことになり、モチベーションが下がり、かえって売り上げを落としてしまうことがある。例えば、部署の業績を上げるために、営業事務の派遣を切ったときに、営業は自ら事務手続きの負担が増え、営業のパフォーマンスが落ちてしまった会社がある。営業にとって事務手続きは案外手間なのだ。例えば、契約書の押印で上司の許可、場合のよってはもっと上役の許可が必要になると、上司らが在席中に会いに行かなければならなくなる。スケジュール調整が難しく、そんな時間があるならば、営業先に回っていた方が良いのである。
新規事業はリスクが高いからといって、既存事業の充実に注力しても、既存顧客がそれだけ増えるビジネスかどうかもわからない。というか、むしろ既存事業は、それだけ新規参入者をひきつけ、競争が激しくなるために、価格が右肩下がりの方が多いだろう。新規事業は失敗するかもと言っていたら、次の事業の柱をいつまでも育てずに、いつのまにか末期症状となることだってあるのだ。
[教訓]
〇物事には全てメリットとデメリットがあり、全てにおいてバランスが大切。
〇新規事業を恐れてはならぬ。