世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

優秀な経営者は今の地位に固執するな

ある日の昼食の席で若い金髪の帝国元帥は言った。
「奪ったのにせよ、築いたにせよ、最初の者は称賛を受ける資格がある。それは当然だ」
その点は、ヒルダも全く同感だったので、心からうなずいた。
「・・・だが、自分の実力や努力に因ることなく、単に相続によって権力や富や名誉を手に入れたものが、何を主張する権利を持っているというのだ?奴らには実力ある者に対して慈悲を乞う道が残されているだけだ。・・・権力は一代限りのもので、それは譲られるべきものではない。奪われるべきものだ」
「すると、宰相閣下は、ご自分の地位や権力を、お子様にお継がせにはならないのですね」
・・・
「私の後を継ぐのは、私と同じか、それ以上の能力を持つ人間だ。そして、それは、何も私が死んだあととは限らない・・・」
・・・
「・・・私を背後から刺し殺して、それですべてが手に入ると思う人間は、実行してみればいいんだ。但し、失敗したらどんな結果がもたらされるか、その点には十分な想像力を働かせてもらおう」

(解説)
ラインハルトとヒルダの会話である。奪ったというのは少し物騒かもしれないが、結果的に奪うことはよくある。既に飲食店がある近くに飲食店を出店するとする。自店が繁盛して、既存店が廃業を余儀なくされる。それは顧客を奪ったという行為である。

ある会社に出資して、多数派工作を行い、既存のオーナーや経営陣を追い出すとする。これも会社を奪ったという行為である。これは、ルールを守っている方法だから、奪っていても、非難されるいわれはない。

しかし、確かに、自分の実力や努力ではなく、親の七光りで、ある地位を手に入れたものに対しては、どこか反感を覚える。それはルールに従っていないわけではないが、スタートラインが異なるからである。はっきり言ってルール違反だと思う。

現代社会においては、お金が権力に結びつきやすい、だから、相続税は別に高くていい。払えない人がいるなら物納だってある。オーナー社長が自分の子孫に、継がせるというのも、どこか気色のいいものではない。でも、それで存続するなら、勝手にすればいい。そんな会社には入社しなければいいだけの話だ。

本当のリーダーは、自分の子供だからと言って継がせはしないだろう。それが経営者として相応しいと考えていれば、継がせるかもしれないが、どこか白々しい。そして、本当のリーダーであれば、今の地位にも固執しない。自分の地位を奪う奴がいたら、それはそれで歓迎すべきだ。そして、それがその組織に相応しくない人間だと思ったら、返り討ちにするぐらいの能力が欲しい。実力がなく、今の権限で、とどまっているだけだとしたら。

(教訓)
〇真のリーダーは、今の地位に固執しないし、自分より優れていると思ったら、譲るくらいの器量が欲しい。
〇未公開会社であれば話は別だが、公開会社で自分の子孫を次の社長にする会社には、真のリーダーは育たない。地位があるからと言って真のリーダーとは限らない。金や地位があるから、その権威が保たれているだけのスカ野郎が大半である。未公開会社であれば、スカ野郎が次期社長になったところでたかが知れている。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする