「歴史の変転と勝敗の帰趨は、ともに一瞬で決する。しかし、大部分の人間は、その一瞬の後姿を、遠い過去に向って眺めやるだけである。現在がその一瞬であると知る者は少なく、自らの手でその一瞬を未来に定める者はさらに少ない。しかも極めて残念なことに、より悪意を持つ者が、より強い意志を持って未来に対するケースが多いように思われるのだ」(D・シンクレア)
(解説)
歴史の大転換点は、一瞬で決まる。そしてシンクレア曰く、2種類の人間がいる。①歴史の大転換点を過去の事象として眺めているだけの人間、彼らは、現在をその一瞬だと認識することもない。②自らの手でその一瞬を未来に定める人間。彼らは時代を作る。シンクレアは後者の人間の中に、悪意を持っている者が多いように思うといっているが、それはどうだろうか。
株式投資を行う際に、日経平均の上がり下がりについて、事後的に、ニュースキャスターが、景気の先行き見通しがどうとか、原油高がどうとか、色々とその原因を語っていることがある。これをその事象が起こった時に、次に株価が上がるのか下がるのか見ていると、ある事象が起こったら必ず株価が上がるとか下がるというものではないことに気づく。
専門家筋が後で理由付けしているだけで、実際、本当にその事象が原因であるかどうかがわからない。原因が同じでも株価が上がるときもあれば、下がるときもある。つまり、専門家にしたところで、その株価の転換点を過去の事象としてしか眺めていないのである。世の中の人間は、その株価の上がり下がりの原因を知ろうともしないだろう。
大半の人間にとっては、過去のことしかよくわからない。現在を判断すらもしていない。ましてや、未来はこうなると予想する人はまるでいない。よく、未来を予言したといって本を書いている人がいるが、もちろん洞察力は見事だが、100%未来を予想できるわけでもない。いくつか当たっただけだ。あるいはたまたま連続で当てているということもあるだけなのである。
一番すごい人は、未来を予想したり、当てる人ではなくて、未来を作る人ではないか。パソコンを将来予想した人よりも、パソコンを作って、未来を作った人の方が素晴らしい。
ビジネスの世界には、将来の社会を予想して、それに向かって動き、未来のサービスを提供することができる人がいる。一歩ではなく、半歩前位を予想できた人が、マーケットを取れる。その意味において、優れたリーダーとはちょっとした預言者なのである。
(教訓)
〇優れたリーダーは、未来を予想するのではなく、未来を創造する。
〇優れたリーダーは、預言者である。