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組織というものは、誰かが折れないと関係は続かない

この逆亡命者は、才気があるだけでなく人格に危険な成分があり、ラインハルトは彼に対し、好意的であり得なかった。それでも、必要とあれば反感や悪意を抑制して、リューネブルクを将来、彼の陣営に向えるだけの度量は備えている。その必要性に関して、彼は親友の意見を求めたことがあった。
「キルヒアイス、あらためて問うのも奇妙だが、リューネブルクという男をどう思う?」
「敵に回せば厄介ですが・・・」
「うむ!?」
「味方にすれば、もっと始末が悪いでしょう」
・・・
キルヒアイスとしては、偏見に基づいてリューネベルクという人間の信頼性に疑義を申し立てたわけではない。ラインハルトが他人に屈する意思がない以上、相手にラインハルトの優越を認めさせるしか、両者の関係は成立しえないわけである。だが、リューネベルクにそれを求めるのは不可能であろう、とキルヒアイスは思っていた。

(解説)
ラインハルトは、必要であれば、どんな人材でも陣営に迎える度量を備えていると自分では思っている。将来的には同盟の政治家であるトリューニヒトを、停戦の交換条件として、ヒルダが受け入れる話をしてしまったから、陣営には迎えたが、最後まで、まともに会おうとはしなかったから、度量が備わっていなかったのか、そもそも必要性がなかったのかは議論の余地がある。

リーダーとしては、自分の好き嫌いで、部下にするとかしないとか、というのはナンセンスである。好き嫌いで選んでいれば、それは単なる同好会であって、会社組織ではなり得ない。そもそも同好会だって、嫌な奴が参加している場合もある。

通常の会話としては、「敵にすれば厄介だが、味方にすれば頼もしい」と続くのだが、キルヒアイスは容赦がない。「敵にすれば厄介だが、味方にすればもっと始末が悪い」という。もはや救いがたい。上記にある通り、これはラインハルトとリューネベルクの相性を問題にしている。リューネベルクが他人に従うことがあり得ず、ラインハルトも以下同文であるから、メンタル的に両雄並び立たず、である。

組織とは上下が不可欠である。別に上の方が折れてもいいが、一般には下の方が折れることが多い。折れない者同士では人間関係が続かない。

(教訓)
〇敵にすれば厄介だが、味方にすればもっと始末が悪い奴は組織に入れるな。
〇二人人が集まると、どちらかが折れなければ人間関係は継続しない。一方が折れ続ける関係も良くない。ある事柄についてはどちらかが折れる、別の事柄についてはもう一方が折れるという関係を築け。必ずしも下が折れ、上に従うという関係でなくてもよい。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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