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リーダーは現場に立て

ヤンはイゼルローン要塞の「接収」を自ら艦隊を指揮して行うつもりだったのだが、彼の不在はエル・ファシル独立政府に歓迎されなかった。彼の留守中に、帝国ないし同盟からの軍事攻勢が行われたり、反革命の武装蜂起が起きたらどうするのか。・・・

後世、ヤンは後方にあって前線の諸将を指揮制御する「軍師」としてのイメージが強いが、その形態をとったのはこの要塞再奪取作戦が初めての事であった。これまでヤンは、自ら策定した全ての作戦において最前線で直接指揮を執り、戦略の構想家と戦術の実行家と、双方を一心に兼ねてきた。彼が敵手たるラインハルト・フォン・ローエングラムを尊敬する理由の一つは、若い金髪の独裁者が、常に陣頭に立って敵軍と戦う姿勢を示すことにあった。上に立つ者こそが最大の危険を冒すべきだとヤンは考え、それを身をもって実行してきたのだ。

(解説)
軍師は、軍を指揮する君主や将軍の戦略指揮を助ける職務を務めるものである。時としては君主の師匠扱いをされていた。ちなみに、軍師の代表例は、三国志の諸葛亮であり、彼の場合は、政治や軍事の枠を超えて、一国家、蜀のほとんどの分野にかかわった。劉備の息子である劉禅がバカ君主であったから、ほとんど君主同然であり、さらに自らも戦場へ赴いている。

ヤンは今まで自らも戦場で指揮を執るタイプであったが、エル・ファシルの政治家たちに請われて、やむを得ず、イゼルローン再攻略は完全な軍師役に徹することになった。

戦略の構想家と戦術の実行家を兼ねるのが、リーダーとしての理想中の理想である。より巨視的な見方が必要な戦場においては、経営者は後方に下がってみることも重要である。しかし往々にして森を見て気を見ずの結果ともなりうる。もちろんリーダーが戦場で一兵士として戦うのは、ナンセンスともいえる。とはいえ、たまに現場に出てみないと、経営に生じた違和感を解消することはできない。

数十店舗を経営する、あるイタリアンレストランのオーナー社長は、特定の日には調理人として働いているそうだ。別にそこの店員を見たいわけではなくて、あくまでも客の反応を見るためである。自分の理想と客の想いにギャップがあれば、間に店長をかましてしまうと、思うようにいかないのを店長や店員の責任にしてしまいがちである。そこまでの権限を下に認めていなければ、下は勝手に動くことはできない。経営戦略を整備する上でも、たまに現場に立つことは必要であろう。リーダー自らが現場に立つことによって、見えてくることもある。

(教訓)
〇経営者は後方に下がってしまうと森を見て木を見ずになってしまうことがある。
〇経営者がたまに現場に立つことで、経営における違和感を修正していくのも自らの役割だ。現状が上手くいっていないとしたら、すべて店長とか店員など部下のせいにしてはならない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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