世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

自分の手足を扱うより上手に組織を動かせ

「追って来たぞ、キルヒアイス、奴らは罠にかかった」
ラインハルトの表情も声も、昂然たる光彩に満ちて、不安や危機感は分子レベルですら存在しないように見える。わずかに演技の一面はあった。キルヒアイスを除く全ての幕僚、全ての兵士を、ラインハルトは服従させ、自らの手足よりも確実に動かさなくてはならなかったのだ。
「卿ら、わずかの狂いもなく、わが節度に従え。ことごとく、わが命令、わが指示に服従して、誤ることなきようにせよ。卿らにとって他の途はないのだ。これを銘記せよ!」
お前たちが生きて還れる方法を、自分だけが知っている。そうラインハルトは言い放ち、全面服従を要求したのだ。彼の部下、約35万人の兵士はそれに従うしかなかった。

(解説)
五体満足で、障害もけがもなく、病気もなければ、手足は普通に動く。組織も自分の身体を動かすように動かさなければならない。いや、実はそれ以上だ。

人間一人でできる能力というのはたかが知れている。そのために組織が必要である。シナジー効果を考えなければ、10人いれば、10倍の仕事ができるはずだ。単純に考えれば10人いれば、自分が持てる10倍の重い物も持てることになる(実際、力学的にそんな単純ではない)。それ故、組織のリーダーは自分の手足以上に組織を動かす必要がある。そうでなければ、組織化する意味がない。人を雇わなければ事業を運営していけないが、その分自分の報酬が下がって、大して従業員と変わらない。資金繰りを考えて、自分のもらい分を少なくせざるを得ない経営者も少なくはない。ほとんど経営者ボランティアのような存在だ。全くもって笑い話ではない。

さて、組織を自分の手足以上に動かすために必要なことは、命令をきちんと伝達することだ。これが案外難しい。別の人間になると、脳からの運動ニューロンが伝達しない。そこで、ラインハルトは「生きて還れる方法は自分しか知らない」と脅すことで、絶対服従をさせることに成功させた。

会社組織の場合、絶対服従させるためには、この組織に属したいという気持ちをいかに持たせるかだ。若いうち、あるいは能力の高い人であれば、他の会社もある、転職してもいいんだとなるだろう。単純に考えれば、この組織に属していた方が、自分にとってメリットがあると思わせられれば、命令に従う。それは経営者自らが考えることであって、実は従業員個別によって、感じるメリットは異なる。単に給料が高ければいいんだろう、と思い込んではならない。

(教訓)
〇自分の手足以上に効果的に組織を動かさなければ、組織化する意味がない。
〇組織に絶対服従させるには、その組織に属することで、他組織以上にメリットを感じるかどうかだ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする