キルヒアイスが、友の表情から心理を推察した。
「リューネブルク少将のことが気になるとおっしゃいますか、ラインハルトさま」
「すこしな」
「リューネブルク少将のことなど、お気になさいますな、ラインハルトさま。もし彼がラインハルトさまのお邪魔になるようでしたら私が何とか致します。ラインハルトさまは前方だけをご覧ください。」
それはキルヒアイスの心底を貫流する決意であったので、むしろ淡々とした口調の中に、熱誠の大河が存在することを、ラインハルトに明らかに知らせていた。ラインハルトは信愛の念を口にした。
「そうだが、キルヒアイス。万事お前に任せる。お前に任せて、結果が悪かった例はないものな」
(解説)
経営者が手足を動かすことを良いこととしていてはならない。これでは単なる個人事業主である。それ故、経営者がやるべきことは、大きな戦略を立てることだ。戦術レベルのことは、他の取締役等の幹部連中に任せて置け。
細かいことも気にするな。気にし出したら、どれだけ時間があっても足りない。経営者は荒れ地を進むブルドーザーで良いのだと思う。道路工事で言うと、最初は現場の測量から行う。設計図があるから、これが事業計画であろう。次に路床工事が行われるが、路床とは土でできており、ブルドーザー等の重機を使って均していく。そしてローラーのついた什器で締め固めていく。後は砕石をしてローラー重機で締め固め、路盤が出来たら基層工時、アスファルトを敷きならす。再びローラー重機で均一に締め固める。それで最後は舗装工事を行っていく。
繰り返すが、経営者がやることは事業計画を立て、ビジネスモデルを組み立てたら、あとはブルドーザーで荒れ地をひたすら進むだけだ。細かいことは、その後の幹部連中や、スタッフが行えばいい。ひたすら前だけを見るのが経営者の役割だ。
大雑把でいいのだ。経営者は。そして、きちんとした道路ができるかどうかは、幹部やスタッフに丸投げしておけばいい。一言「万事任せる、君たちに任せておけば安心だ」でいい。それ以上は気にするな。
(教訓)
〇経営者は道路建設のブルドーザーであればよい。
〇戦略レベルは経営者が考えるが、戦術レベルは幹部が考え、実行も全て任せろ。