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迅速と拙速の違いを理解せよ

勝利のためには今は兵力の集中が必要だ、というヘルベルトの見解は正しかった。しかし、インゴルシュタットが段階を踏み、敵情を調べて慎重に行おうとしたことを、若い大公は迅速に行おうとして、迅速と拙速を混同し、致命的な失策を犯すことになる。

(解説)
拙速とは、仕事は早いが、その出来栄えや質は下手で劣っているという意味になる。判断が素早い場合には「迅速な判断」と言えるが、よく考えずに早急に判断することは「拙速な判断」と言われる。迅速と拙速は異なるのである。そのため、拙速は致命的な失策につながる危険性を秘めている。

しかし、兵法書の「孫子」においては、「拙速は巧遅に勝る」とも言われている。巧遅とは、巧みでも遅いことであるが、完璧でなくても仕事が早い方がまし、という意味である。

例えば、6割の完成度でしかないのだが、期限内に間に合わせてくる場合と、期限内には終わらずに10割の完成度で提出してくる者がいたとしたら、当然評価されるのは前者である。仕事には必ず期限がある。期限を過ぎればどんなに完成度が高くても無価値なのだ。

それにその完成度が要求されるのは、その仕事内容にもよる。当然、100%の完成度で期限を守れれば良いのだが、少し気にしすぎという場合も少なくないし、その100%の完成度は当人基準であることも多い。提出物を見てみたら、意図していることと全く違ったりもする。そんなことよりは、さっさと草案だけでもすぐに終わしてもらって、その草案を上長が見ることで、きちんと意図しているものができているかどうかを確認できた方がいい。その意味で「拙速は巧遅に勝る」のである。期限内である限り、拙速であっても期限ぎりぎりに置いて、100%の完成度というクオリティコントロールを達成することはできる。

完成度が6割ぐらいでも許される仕事はある。そもそも正解のない仕事だ。特に新規事業であれば、結果10割の完成度はあれど、途中経過で10割の完成度にはしようがない。とにかく、早くその新規事業を開始することに意味があることもある。後は試行錯誤によって正解に近づけていけばよいのだ。

打ち合わせの資料ですらも、ブレインストーミング用の資料では、完成度など要求されない。それによって、みんなが打ち合わせのベースにできればいいだけなのだ。自分で考えるよりも、みんなで考えた方が良いアイデアが出ることもある。だから仕事は、仕事の内容によってだが、正確性以上にスピードを重視した方が良いという事もあり得るのだ。誰がやっても同じ結果になるものであれば、期限内である限り、遅くても正確には許される。

(教訓)
〇迅速と拙速を混同するな。
〇拙速は巧遅に勝る。
〇誰がやっても同じ結論になる作業は正確重視、正解がわからない仕事はスピード重視。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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